「ペイディの黒字決算」ではみえないBNPLの苦難 ジャックスは事業撤退、軌道修正を図る動きも
ペイパルは「ディストリビューション・サービス・アグリーメント」と「システム・デベロップメント・アグリーメント」という2つの契約の基、ペイディに営業面やシステム面での支援を行っている。ペイパルからのこうした支援が営業収益に含まれているようだ。
決算書では2023年12月期の営業収益が前年度比で1.5倍になった。大幅な増収によって251億円の営業費用を吸収し黒字化した格好だ。しかし支援を除いた「実ビジネス」の売り上げをベースにすると、数十億円の赤字になっているとみられる。
資金調達や加盟店への保証も支援
営業費用の低減という点でもペイパルによる支援効果は絶大だ。
ペイディは2023年12月末時点で1400億円もの借入金がある。これはペイディが銀行や資本市場から直接調達したものではない。ペイパルからの貸し出しだ。
ペイパルはこの資金を2つの手段で調達している。1つは、みずほ銀行をアレンジャーとするアメリカでのシンジケートローン(協調融資)、もう1つは2023年に発行したサムライ債(円建て債券)だ。
ペイパルはここで調達した資金を0.5%といった超低金利でペイディに融通している。ペイディは自ら直接調達するよりも大幅に金融コストを抑えられている。
ペイディの後払いを導入している加盟店に対しては、売上金の「100%入金保証」を謳っているが、保証を最終的に行うのもペイパルだ。無償で提供している。
これからペイディが成長していくうえで強大な親会社であるペイパルの存在が大きいのは事実。ただ現状は強く依存することでBNPLサービスを提供しているのが実態だ。
前出の有識者は「ペイパルがこのままペイディを持っていても買収資金の3000億円に見合うまでスケールさせることは難しい」と見通す。一方、「売却するにしても現在の企業価値に照らして大きなロスが出る」とし、「収益を高めなければ八方塞がりになりかねない」と指摘する。