日本の海外支援、「都市鉄道」こそ強みが生かせる ジャカルタ地下鉄が日本式を広める「先生」に
<筆者解説>MRTJが日本のノウハウを凝縮しているという中での面白いエピソードがある。同じく円借款で進めているベトナム・ホーチミンMRTのトレーニングでのことだ。基本的には日本が実施しているが、一度ジャカルタのMRTJで行った。すると、ホーチミン側からMRTJによる研修がよかったという声が出て、もう一度行うことになったのだ。
ホーチミン側からすれば、日本の研修は素晴らしいが、自分たちのはるか先を行きすぎているという面がある。ホーチミンとは数年の経験差しかないが、しっかりとしたオペレーションをやっている。同じ東南アジア同士ということから身近に感じることができるMRTJから学ぶことは多いという。
すでにMRTJは他都市の支援を行うことに誇りを持っており、バングラデシュのダッカもやらせてくれ、ほかの都市もないかという相談がJICAに来ているそうだ。現にMRTJ自らもインドネシア国内でパレンバンのLRTなどと提携して支援している実績がある。そういう意味で、日本の支援でジャカルタに鉄道会社をゼロから作ったのは大いに成功している。
MRTJの社員は旧来のインドネシアの鉄道会社とは一線を画す。当初の幹部は、石油会社をはじめとする有力企業から流れてきた人たちがほとんどを占め、シンガポール系インドネシア人が多数活躍した。今や、MRTJはジャカルタの就活大学生の人気企業ランキング上位に位置するほどになっている。MRTJがインドネシアの地方都市、そしてアジア各地に都市鉄道の運営ノウハウを展開していくことは、立ち上げに関わった日本の関係者も鉄道マン冥利に尽きるのではないだろうか。
都市全体を考えているのは日本だけ
――先ほどお話に出たプレFS(「インドネシア国地方主要都市における都市公共交通システムに関する情報収集・確認調査」)は、スラバヤ、メダン、バンドン、スマラン、マカッサルの5都市の中の1つという位置づけでした。
安井:MRTはスラバヤ市だけだ。南北線については、日本と同じ狭軌の架線方式がおそらくいいのではないかと思っている。南北線は既存の国鉄(KAI)線と並行して走り、起点も終点も国鉄の駅と重なるので、相互乗り入れできると便利だ。その可能性は残しておきたい。
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