欧州委員会は、中国製のEVが不当な補助金の恩恵を受け、ヨーロッパでの販売価格を人為的に低く抑えているとして、2023年10月から調査を継続している。
その一環として、欧州委は3社の中国メーカーを対象にしたサンプル調査を行い、国有自動車最大手の上海汽車集団(上汽集団)に38.1%、民営自動車大手の吉利控股集団(ジーリー)に20%、中国のEV最大手の比亜迪(BYD)に17.4%の追加関税を課す暫定措置を決めた。
それだけではない。欧州委は上述の3社以外の中国製EVにも追加関税を課すとしており、税率は調査に自発的に協力しているメーカーが21%、協力していないメーカーが38.1%となっている。
零跑汽車に適用される追加関税は21%だが、輸入乗用車の通常の関税(10%)と合わせて31%も課税されれば、ステランティスが描いた合弁会社を通じた輸入計画に痛手となるのは必至だ。
欧州メーカーも追加関税に反発
注目すべきなのは、欧州委の追加関税をめぐり、お膝元のヨーロッパの自動車大手から反発の声が上がっていることだ。
「ヨーロッパ市場のEV需要は減速しており、欧州委の決定は時宜を得たものではない。追加関税は長期的に見て、ヨーロッパ自動車産業の競争力向上の妨げになる」。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループは、6月12日付の声明で率直に批判した。
その裏には、ヨーロッパ市場に輸入されている中国製EVのあまり知られていない実態がある。欧州自動車工業会のデータによれば、ヨーロッパのEV市場における中国製EVのシェアは、2020年の約3%から2023年には20%超に急上昇した。
しかし、これらの中国製EVの大部分は、実はテスラやBMWなどの欧米メーカーが中国工場で生産して輸入したものなのだ。中国メーカーの独自ブランドのEVに限れば、2023年の市場シェアは8%に満たない。
つまり、追加関税の影響を短期的に最も大きく受けるのは、中国からの輸入計画の見直しを迫られたステランティスを含む欧米メーカーなのである。
(財新記者:余聡)
※原文の配信は6月15日
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