初代社長が語る、JR東海の「観光列車論」 東海道新幹線は観光列車になりうるのか
――ローカル線に続々と増えている観光列車ですが、中には自治体の補助で立派な列車だけ作って終わり、というハコモノ行政的な列車もあります。
ローカル線には、昼間はほとんど乗客がいなくて鉄道の役割を果たしていない路線もある。でも、朝夕は鉄道がないと高校生が通学できない。だから、地元は廃止することにものすごく抵抗がある。
たとえば、当社の名松線は2009年の台風で大きな被害を受けて、家城―伊勢奥津間は現在バスによる代行運転となっています。地元の方に「鉄道をやめてバスにしたい」と申し上げたら、「絶対に応じられない」と反対された。市や県が責任持って線路の復旧にかかわる山や河川の復旧をやるから、鉄道を復旧してもらいたいと。そこまで言われたらやるしかない。それほどみなさん鉄道に愛着がある。
地域に根ざしたサービスこそ本物
鉄道をやめられないとしたら、何とか生き残る道を考えないといけない。その方向性の1つが観光列車です。
当社が観光列車をやるつもりは、今はありません。ただ、当社のエリアにある第三セクター鉄道の明知鉄道は、食堂車を連結した列車を走らせている。観光列車を新たに仕立てたのではなく、通常ダイヤの列車に食堂車を連結しているだけ。それでも大好評ですよ。
人と人のコミュニケーションを図るには、食堂車が一番いい。地元のエプロンがけのおばさんが駅のホームで名産品を売るとか、車内でサービスするとか、そういうことが地域に根ざした、土の香りのする本当のサービス。明知鉄道の方式は観光列車の1つのモデルになりうる。そこを間違えると、下手したらハコモノ行政になりかねない。
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