ガイトナー長官の舵取りは大失敗か、危機管理の勝利か

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最も重要なのは、返済困難に陥った住宅ローンの返済条件変更を銀行に強制する規則の導入に財務省が抵抗してきたことだ。財務省は、債券所有者に損失の負担を強いると、銀行の収益性を弱め、景気回復を遅らせる可能性があると主張している。

しかし、これは支持しがたい。すでに200万戸を超える住宅が差し押さえられ、さらに200万戸が差し押さえの危機に直面している。また米国全体で、住宅所有者の20%以上が当該住宅の市場価格を上回る住宅ローンを抱えている。住宅ローンの条件変更に関する規則を導入しなかったことにより、何百万もの家庭が不要な苦痛を受け続け、住宅産業に大きく依存する米国経済の回復を大きく遅らせてきたことは明らかだ。

結果論だが、オバマとガイトナーには二つの大きな誤算があった。

一つは、景気の後退が予想よりもかなり長引いている点だ。それは、今回の景気後退がウォール街の無節操が招いた過剰債務に起因するものであり、景気循環のせいだけではないからだ。もう一つは、金融部門の繁栄が景気回復の前提条件である、という想定だ。現実には、個人消費と成長の回復には、債権者から債務者への富の移転が必要だ。

このままでは、ガイトナーは危機管理能力を発揮して大恐慌の再来を防いだことより、政策をしくじったことによって国民の記憶に残ることになる可能性が高い。

(ニューヨーク駐在・特約:ピーター・エニス =週刊東洋経済2011年9月3日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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