ガイトナー長官の舵取りは大失敗か、危機管理の勝利か


ガイトナーはまた、06年に連邦預金保険公社(FDIC)のトップに就任した穏健派のベテラン共和党議員、シエラ・ベアーと衝突した。ベアーは、サブプライムローン市場が金融制度をむしばんでいるとの懸念を徐々に強め、規制強化を求めた。

08年3月、サブプライム市場に亀裂が入り、ベアー・スターンズが破綻の脅威にさらされるや、ガイトナーは素早く同社への緊急融資とJPモルガン・チェースとの合併を準備した。ベアーはこの救済に反対し、「投資銀行は、30年代の恐慌の際に預金者保護を目的に作られたセーフティネットによって保護されるべきではない」し、「損失は、納税者ではなく債券の所有者が負担すべきであり、連邦政府は、経営に失敗した金融会社を救済するのではなく、退場させるべきだ」と主張した。

しかしベアーの主張は通らなかった。当時、財務長官を務めていたハンク・ポールソンとガイトナーは、08年9月にリーマン・ブラザーズを破綻させたが、その一方でベアー・スターンズを救済。これを先例として、以後、金融機関を救済する政策を取った。必要な財源は納税者が負担した。おかげでシティコープやゴールドマン・サックスなど経営難に直面した企業は存続することになった。これらは単に生き延びただけでなく、その後大儲けしている。

08年の金融危機の原因について、議会の権限を背景に徹底的な調査が行われた結果、サブプライムローン市場で構造的な不正が行われていたことを示す多くの証拠が発見され、犯罪の疑いも濃厚となった。だが、投資銀行や商業銀行の幹部個人は、誰一人として刑事・民事の責任を問われなかった。その理由の一つとして、もし関係者が刑事訴追されることになれば、市場が不安定化し、景気の回復を脅かすのではないかと、ガイトナーが懸念したからだ、という見方が広まっている。

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