ガイトナー長官の舵取りは大失敗か、危機管理の勝利か
辞任をほのめかしていた米国のティム・ガイトナー財務長官が2012年の大統領選挙までの続投を決めた。彼は、過去15年間、金融界で最も重要な、しかし、評価の分かれるプレーヤーの一人だった。
民主党リベラル派は、彼をウォール街の随伴者と見る。財政赤字への対応に追われるばかりで、景気を浮揚させ、失業率を低下させる大規模な雇用創出プログラムを積極的に推進しようとしていないと批判する。
一方、共和党は彼を、財界に対し厳しい姿勢を取って政府支出をむやみに拡大し、“揺りかごから墓場まで”というヨーロッパ流社会主義を信奉している、と見る。
彼は長期間政策の中心的役割を果たしてきただけに、成功と失敗が併存するのは避けられない。彼への評価は「危機の発生を防げなかった。しかし、封じ込めることには成功した。ただ、根本問題を根絶することはできなかった」となりそうだ。
たとえば08年の金融危機当時、彼はニューヨーク連銀総裁だった。米国の巨大な中央銀行制度の中で2番目に影響力の大きい地位だ。この時期、米国の資本市場のインフラは、危うく完全崩壊しそうになった。
このときガイトナーは、金融システムの安定化に貢献したが、一方で大銀行を税金で救済した。これは今日まで議論の的だ。また、危機の真の原因であるウォール街の歪んだやり方に終止符を打たなかった。
09年には財務長官に就任、最大級の景気刺激策の策定に一役買った。これは、客観的に見て大恐慌の再来を防いだと評価できるだろう。