任天堂が「異端の経営者」を抜擢した納得の理由 日本企業と北米企業との「文化のミスマッチ」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

自動車もパソコンも、海外式の「レンガ型・モジュラー型」、つまりAとBとCのパーツを組み合わせるという作り方になりましたが、ゲームも同じで、海外では同じ方式で作らなければなりません。

マーケター、シニアデザイナー、ジュニアデザイナー、全員がパーツの組み合わせです。それなりの人が入ってくるのですが、みんな大体40点~80点ぐらいのレベルで、最初は、作り方や言語の違いなどがあって、共通のものを見つけるまでの大変さがあります。

ただ、パーツがそろってしまえば、それぞれの領域での作業になりますから、とても強い。映画でもゲームでも、大規模なものを作るとなるとアメリカには勝てないなと感じさせられます。

クリエイターワンダーランド 不思議の国のエンタメ革命とZ世代のダイナミックアイデンティティ
『クリエイターワンダーランド 不思議の国のエンタメ革命とZ世代のダイナミックアイデンティティ』(日経BP)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

日本の場合は、「石垣型・すり合わせ型」です。属性も、何ができるのかもわからないけれど、「20年やっているから社内のことは何でもわかっている」というような人が多く、150点ぐらいの人がたまにいて、その周りに30点ぐらいの人がたくさん集まり、真っ黒なスイミーのまわりの赤い魚たちようにダイナミックに動くのです。

連動して1つのものを作り上げる時は、トップさえ盤石で、すごいものを見ていれば、周囲の人たちが、コミュニケーションミスもなく、きれいに作り上げることができます。

100人~200人の大規模な開発をするのは苦手ですが、20人~50人ぐらいの機動性の保てる規模で、ちょっと見たことのないものを作るという時には、日本人は抜群に優れているのです。

日本的な「すり合わせ型」

モバイルゲームは、2010年代の前半頃までは、モジュラー型で作られていました。人がどんどん入れ替わり、「ガンダム」で成功したゲームエンジンを、そのまま「ワンピース」に持っていく。マーケターなど、ビジネス畑の人が外から入って、サイクルを回していた時代でもあります。

ところが、これはゲーム作りには向いていないやり方でした。いま、DeNAもGREEも調子が振るわない理由は、ゼロイチで「面白いゲームって何なのか?」という所を作り上げられない点にあると思います。

日本的な「すり合わせ型」なら、エンジニアならこの人、サーバーならこの人というように、ずっと一緒に同じ釜の飯でやってきたようなチームで、アーティーでありながら他とはちょっと違うゲームを作ることができます。

実は、任天堂のポイントも、海外では作らせていないというところにあるのです。

後半(7月2日配信予定)へ続く

(構成:泉美木蘭)

中山 淳雄 エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかやま あつお / Atsuo Nakayama

エンタメ社会学者。事業家(エンタメ専業の経営コンサルRe entertainment創業https://www.reentertainment.online/やベンチャー企業役員(Plott、ファンダム)をしながら、研究者(早稲田博士・慶應・立命館大研究員)、政策アドバイザー(経産省コンテンツIPプロジェクト主査、内閣府知財戦略委員)などを兼任し、コンテンツの海外展開をライフワークとする。以前はリクルート・DeNA・デロイトを経て、バンダイナムコスタジオ・ブシロードで、カナダ・シンガポールでメディアミックスIPプロジェクトを推進&アニメ・ゲーム・スポーツの海外展開を担当。著書に『クリエイターワンダーランド』『エンタメビジネス全史』『エンタの巨匠』『推しエコノミー』『オタク経済圏創世記』など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
作家・角田光代と考える、激動の時代に「物語」が果たす役割
作家・角田光代と考える、激動の時代に「物語」が果たす役割
作家・角田光代と考える、『源氏物語』が現代人に語りかけるもの
作家・角田光代と考える、『源氏物語』が現代人に語りかけるもの
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT