TVマン見た「マジで秘境」チベット仏教の村(中編) 歴史に刻まれた「チベット遺産」と異文化の影響

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「このカレーにつけて食べて。熱いから火傷しないようにね」 

「チャパティ、美味しそう」

カナさんは焼きたてのチャパティに釘付けだ。       

「あ、ダールカレーだ。俺、これが一番好きなんです」

ダールカレーの「ダール」とは豆のことで、インド全般で一般的に食べられている伝統的な料理の1つ。

豆類は栄養価が高く、ナコ村のような寒冷高地では重要なタンパク源となっているに違いない。

辺境の地で家庭的な宴は盛り上がった

インドに入国してから、ほぼ毎日のようにカレーを食べ続けたのだが、ダールカレーが一番美味しく感じられた。スパイスはそれほどきつくなく、消化にもいい。

豆のスープなので、味噌汁のように毎日食べても飽きがこないのだ。

「お母さん、最高っス!」

「本当に、とても美味しい」

お母さんの料理はとても質素だが、刺激が少なく、繊細で優しい味わいがした。そして、出来たてのチャパティがなんとも言えないくらいうまい。

「おかわりあるから、どんどん食べてね」

「うまいうまい」と次から次へとチャパティを頬張る2人を見て、親子そろって大笑いしていた。

それから4人でいろんな話をした。日本のこと、旅のこと、チベット文化のこと、そしてナコ村の生活など。宴は大いに盛り上がった。

ここには、頻繁ではないが外国人観光客が泊まりに来るらしい。そのおかげで、70歳近いお母さんも英語が大分話せるようになったとのことだ。

「そう言えば、部屋にビールの瓶があったけど、この村でお酒を飲む人っているんですか?」 

「あ、部屋にビール瓶があった? ごめんね。前に泊まったイスラエル人の観光客が残していったのを片付けるのを忘れてた」

この村にも兵役が終わったイスラエル人が数多くやってくるとのこと。その観光客を狙い、イスラエル料理を出す食堂もできたらしい。

男とそんな話をしていると、今まで笑顔を絶やさなかったお母さんの顔が曇った。

「わたし、イスラエル人が嫌い。大騒ぎするし、お酒も飲む。何度注意しても一向に聞かない」

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