それからしばらく村の中を歩くと、4歳くらいの2人組の女の子を見かけた。1人の子は茶色っぽい金髪で、目の色が茶色く、肌全体の色素が薄い。スピティに来てから初めて見る顔つきだ。もう1人は浅黒い肌に真っ黒の目をしている。
「こんにちは、この村の子?」
「人けのない村」で必死の宿探し
茶色っぽい金髪の子が着ている水色のトレーナーはかなり古びていて、少し薄汚れている。
「ねー、お金ちょうだい」
少しびっくりした。インドの都市部にいたときは、子どもたちからよくお金をせびられたのだが、スピティに来てからは一度もそんなことはなかった。ナコ全体が経済的に苦しい状況にあるのかもしれない。
「お金はあげられないけど、お菓子をあげるよ」
非常用の食料としてバックパックに詰め込んでいた飴を差し出すと、2人は喜んで口の中に放り込んだ。
「ねぇ、この辺に宿とかないかな?」
リアクションがない。どうやら英語が通じないらしい。仕方がないので、寝るポーズをしたり村の方向を指差したりすると、彼女たちは手招きしながら歩き出した。
後ろをついていくと白い壁の小さな家へ案内され、2人はノックもせずに家の中へ入って行った。すると、20代くらいの若い女性が中から出てきた。
「どうしました?」
「この村で宿を探しています。この辺りに泊まれる場所はないですか?」
彼女も英語はあまり得意ではないようだが、何とかこちらの意図は理解してくれたようだ。
「ついてきて」
数分ほど歩くと、民家の前に止まり、真っ黒に日焼けしたロバの世話をしている30代くらいの人のよさそうな男性に話しかけた。
「君たち、宿を探しているの?」
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