お客様の要求水準が高くなった--JR九州社長 唐池恒二

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お客様の要求水準が高くなった--JR九州社長 唐池恒二

九州では、東京や大阪とは違い、黙っていてもお客様が乗ってくれるわけではない。高速バス、マイカー、飛行機といったライバルも多い。その中で生き延びるためには、単に目的地にお運びするという発想ではダメだ。まず安全が大前提。さらにプラスアルファとして、乗ること自体に感動を覚えてもらうことで鉄道を選択していただける。それが形となって表れたのが、車両デザインやサービスだ。

上場には法整備も必要

単に斬新なデザインなら、最初は感動しても毎日乗っているうちに飽きてしまう。でも水戸岡デザインは1カ月経っても、2カ月経っても、飽きることがない。当社の列車に乗り慣れている人が東京や大阪の列車に乗ると、「何、この列車」と言うそうだ。お客様のデザインに対する要求水準が高くなっている。だからレベルは落とせない。デザイン重視は今後も続く。将来もし水戸岡鋭治氏が引退して、別のデザイナーにお願いするとしても、水戸岡デザインを引き継げる人はいると思う。

九州は8割以上が不採算路線。当社から見ても、鉄道よりバスのほうが効率的という線区はある。でもそこをすぐにバス転換するということは考えていない。国から経営安定基金をもらっているのも、運用益で赤字を補填して不採算路線を維持するためだから。ぎりぎりまで地域の足は確保したい。それに、線区別にここは赤字というデータが出たとしても、その路線の利用者は、その路線を使って新幹線に乗ってくださっているかもしれない。そういう点を考慮すれば、実質的な不採算路線はもっと縮小する。

上場に際しては、まず経営安定基金の性格を明確にすること。国に召し上げられる可能性があるといった不安定な位置づけでは株主の理解は得られない。上場後は(規模などの面から買収されるリスクが高いため)外国人持ち株比率などに関して、被買収対策も講じる必要があり、場合によっては法整備も必要になる。このような不確定要素を取り除いて初めて上場できるとしたら、早くても3年後ということになるだろう。

からいけ・こうじ
1953年生まれ。京都大学法学部卒業後、国鉄入社。外食子会社社長や鉄道事業の営業部長などを経て2009年より現職。

(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2011年9月3日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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