コカコーラを日本一売った男の「営業力」の源泉 「雨風に曝され、つらい外回り」に先輩の教え

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すし安は頑固を絵に描いたような主人と、それに負けないくらい気の強い奥さんがやっているお寿司屋さんです。以前から私たちをひいきにしてくれており、店の駐車場にはもう何台目かの自販機が設置されています。

しかし、少々気難しいところがあり、出入りの業者の言葉遣いや商品の扱い方、訪問したときのクルマの停め方など気に入らないことがあると、凄い剣幕で怒られます。

業者同士でよく話をするのですが、どのあたりが怒りの引き金になるのかよくわかりません。こちらは普通に話しているつもりでも、突然へそを曲げたりするので、なかなか厄介です。

あんたどういうつもり?

今日は一日中雨でした。びしょびしょに濡れながらのルート回りを終え、事務所で日報を書いていると、「おーい、電話だぞ」と私を呼ぶ声が聞こえます。「はいはい」と受話器を取るとすし安の奥さんからです。

「はて、なんだろう。昼過ぎにお伺いして、注文の商品を置いてきたばかりだけど」と思いつつ、用件を伺います。

「主人がすごく怒っているのよ。私も同じだけど、あんたどういうつもり?」

一気に背筋が凍り付きます。

「何をやっているのよ。雨に濡れた箱もあるし、床がびしょびしょじゃない。ちょっと店まで見に来なさい」

怒られるようなことをしていないし、納品した商品も濡らさないように運んだので、クレームになるようなことはないはず。状況を飲み込めません。でも、まずはお店に伺わざるを得ない状況です。受話器を置くと思わずため息が漏れ、天井を仰ぎます。

「どうした、深刻な顔をして」

電話のやり取りの様子を横で見ていた先輩社員の土居さんです。

「じつは、すし安さんから……」

話の内容を伝えます。

「そうか、そりゃ大変だな。でも、お前はちゃんとやってきたんだな。それは間違いないか」

「はい、怒られるようなことは何もないと思います」

「よし、じゃあ、一緒に店まで行ってやるから乗せてってくれ」

「え、いいんですか。でも、土居さんには関係のない話なので……」

「いいから一緒に行こう。ほら、遅くなるとそれだけで怒られネタが1つ増えるぞ」

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