コカコーラを日本一売った男の「営業力」の源泉 「雨風に曝され、つらい外回り」に先輩の教え

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早々にクルマを出して、2人ですし安に向かいます。やれやれという気持ちと、もう暗くなりかけているこの時間にお店に行ってくれる土居さんへの申し訳なさが入り交じり、なんとも言えない感情がこみ上げてきます。

お店までもうすぐです。そのときに土居さんから一言。

「いいか。お前の言う通りなら、こちらに非があるとは思っていない。でも、俺は先輩としてお店でお前を思い切り叱る。思い切りだぞ。お前も覚悟して叱られろ」

何を言っているのかさっぱりわかりません。非がないのなら、怒鳴られる筋合いもないのではないか。土居さんからそんな話を聞かされながら、すし安に到着です。

2人で店に入ると主人が開口一番、「お前のところはなんだぁ。倉庫を見てこい」との怒鳴り声が飛んできます。奥さんと3人で倉庫に行ってみると、私が納品したあたりに水がしみ出し、商品も濡れています。「これはないよね」と、奥さんが隣でつぶやくようにこちらを見ます。

よく見るとウチの商品ではなく、他の業者が入れたものが水浸しで、それでこちらの在庫スペースが同じ状態になっているように見えます。土居さんだけでなく、奥さんもそのときに気がついたようです。

ちゃんと謝れ! すぐに片づけろ

「これはウチじゃなくて、あとから納品した他の業者の品が濡れて……」と私が説明しようとすると、突然、土居さんが私を怒鳴りつけます。

「こらぁ、何だぁこれは。こんなことをしたらお店にどれだけ迷惑が掛かると思うんだ」

ものすごい迫力です。思わず肩をすくめますが、私以上に奥さんが土居さんの剣幕に驚いた様子です。そうこうしているうちに主人もやってきました。間髪入れず土居さんが怒鳴り続けます。

「だいたい、お前がきちんと整理しておけば、こんなことにならなかったんだ。我々の仕事はこんなんじゃダメだ。ちゃんと謝れ! すぐに片づけろ」

それからも土居さんは厳しく私を叱りつけます。私は「申し訳ありません。以後こういうことのないように気をつけます」と平謝りです。主人と奥さんに深々と頭を下げて、2人で片づけに取り掛かります。

腕組みをしている主人の傍らで、奥さんは事情を察してきまり悪そうにこちらを見ています。在庫スペースを片づけて店を後にします。営業所に帰るクルマの中で、土居さんが話しかけてきます。

「どうだ、気分は。これでしっかりと我々の姿勢が相手に伝わったから、まぁよしとしよう」

「よしなんですか。正直きつかったです。事前に『覚悟して叱られろ』と言われていたからなんとか耐えられましたが、そうでなかったら『なんでこんなことを言われるんだ』と、さらに落ち込んでいますよ。第一、こちらに落ち度がある訳ではないですから」

この状況に釈然とせず文句も言いたくなります。土居さんは「悪い、悪い。でも、これで一番いいかたちで収まったから勘弁しろ」と涼しい顔をしています。

そう言われても何がなんだかわかりません。まぁ、すし安の怒りも収まったからいいかと、ひとまずホッとしてクルマを走らせます。

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