ダウン症児を虐待、私の愚行から考える偏見の真因 不寛容な日本社会の根底にあるのは「無知」

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反知性主義が叫ばれるようになって久しい。だが、人間が総合的な存在である以上、生産性という、たった1つの物差しによって偏見を抱き、差別するのではなく、相手を理解し、よりよい接しかたを見つけていくための知性がこの社会に必要だ。

ドラえもんに「10分おくれのエスパー」という話がある。この話では、ジャイアンが友だちを一方的に傷つけるのだが、彼の脅し、理不尽さにのび太は屈し、正しいのはジャイアンだ、といってしまう。彼は帰宅し、強い後悔の念とともにこうつぶやく。

「正義を守るにも力がいるんだなあ。力が欲しいなあ」

そう。私たちには力が必要だ。ただしそれは腕力ではない。権力でもない。知性という力だ。私たちが自らの無知を知り、いくつになっても学ぶことを忘れず、現実を知り、子どもたちに伝えていく。この努力なくして、寛容な社会など永遠にやってこない。

世界に誇れる寛容な社会を作る

障がいを社会にひらく。それは途方もないエネルギーを必要とするだろう。

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だが、世界に誇れる寛容な社会を作る、という目標は、私たちがチャレンジする価値のある、全力で取り組むべきテーマではないか。同時にそれは、社会的な虐待をし、その事実と向き合おうとしないまま、大人になった私(たち)の責任でもある。

<未知>なる現実へと若い人をいざない、<既知>に変え、<無知>ゆえに生まれる偏見、そして差別をなくしていく。そのためには、まず、私たち大人が、障がいを知り、これまでの自分の愚かさを省みなければならない。

井手 英策 慶應義塾大学経済学部教授

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いで えいさく / Eisaku Ide

1972年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。日本銀行金融研究所、東北学院大学、横浜国立大学を経て、現在、慶應義塾大学経済学部教授。専門は財政社会学。総務省、全国知事会、全国市長会、日本医師会、連合総研等の各種委員のほか、小田原市生活保護行政のあり方検討会座長、朝日新聞論壇委員、毎日新聞時論フォーラム委員なども歴任。著書に『幸福の増税論 財政はだれのために』(岩波新書)、『いまこそ税と社会保障の話をしよう!』『18歳からの格差論』(東洋経済新報社)ほか多数。2015年大佛次郎論壇賞、2016年慶應義塾賞を受賞。

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