飼いネコの「胸のしこり」放置で起きていた"悲劇" 9割は予防可能、知っておきたい「ネコの乳がん」

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遠くの臓器に転移をする前の段階であれば、手術や投薬治療などによって高確率でがんを取り除けます。しかし、がんがある程度以上に進行してしまうと、現在のどんなに先進的な治療でも根治は困難ですから、恐ろしい病気です。

テニスボール大の「しこり」も

乳腺という、母乳をつくる組織にできる悪性のしこり(腫瘍)が乳がんです。ネコは左右4対、合計で8つの乳頭(乳首のこと)を持ちますから、左右1対しか乳頭を持たない人間よりも広範囲に乳がんが発生します。

乳がんはメスネコに多い悪性腫瘍ですが、人間の男性と同様にオスのネコに発生することも稀にあります。

ぼくのところには、動物病院で切除されたしこりがたくさん送られてきます。かろうじて肉眼で識別できる1ミリも満たない小さなものから、テニスボール大のものまで、さまざまな大きさのしこりの病理診断を行います。

それらに特定の処理を施して薄く切り、見やすくするために色をつけたものを顕微鏡で観察します。

良性の腫瘍であれば、細胞は正常な乳腺の細胞とあまり変わらない比較的整った形をしています。

しかし、悪性腫瘍、つまりがんだと、下の図で示したように、正常な構造から大きく逸脱した異常な形が観察できます(※外部配信先ではイラストを閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。

左はほぼ正常な乳腺組織。矢印で示している真ん中の空所に分泌された乳汁が見える。右はがん細胞。正常な構造から大きく逸脱したがん細胞が増えている。矢印はがん細胞が活発に分裂している様子(顕微鏡写真:中村進一提供)

乳腺に発生する腫瘍の良性と悪性の割合でいうと、ネコでは、乳腺腫瘍の80~90%が悪性の乳がんです(ちなみに、イヌではほぼ半々です)。

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