危機は循環する 白川浩道著
あまたある日本経済展望論の中で、本書をユニークにしているのは「貯蓄税の導入」の提唱である。
「消費低迷、国内超過供給によるデフレが長引けば、長期的にみて財政の破綻確率は上昇する」、さらなる金融緩和や「むしろデフレを深刻化させる」消費税増税ではなく、富裕層に税負担を強いる貯蓄税の導入こそ、消費刺激面からも賢明と詳論する。
提唱された貯蓄税の制度設計の基本コンセプトは、家計貯蓄の「過剰部分」に課税するというもの。具体的には預貯金と国債保有で2000万円を超える部分に、実効税率がデフレ率と等しくなるよう課税する。同様の効果の「マイナス金利政策」より経済的な混乱ははるかに少ないという。
世界を見渡してもこの種の貯蓄税の例はない。世界で希有の長期デフレに陥っている日本だけに、前例を超えた新たな試みに価値はありそうだが、何より新税を政治的にこなせるかが、第1の関門になりそうだ。
NTT出版 2310円
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