"梅クライシス"日本一の産地で収穫量急減のなぜ 南高梅の産地・和歌山県、梅農家が悲鳴

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梅農家が梅を作れなくなれば、農業自体をやめてしまうリスクがある。このため、経営が成り立つようにリスク分散できるようにしないと「梅さえも作れなくなる」と述べ、「梅産地を守るためには、複合栽培が必要だ」と強調する。

循環型農業の確立を目指して

みなべ町は5月、国連が掲げる持続的な開発目標(SDGs)の達成に向け、優れた取り組みをしている自治体を国が認定する「SDGs未来都市」に選定された。その中で、特に優れた取り組みをする10の自治体が毎年認定される「自治体SDGsモデル事業」にも選ばれた。

これらの認定を受けるため、真造さんが町議会で提案するなど尽力した。環境事業の1つの目玉は、町全体で年間9000トンにも上る剪定した梅の枝の「バイオ炭」としての活用だ。

バーベキューなどに使う一般的な炭は燃料として使われ、温室効果ガスを発生させる。これに対し、肥料として使うバイオ炭は、地中の微生物を増やし土壌改良と収穫向上につながる。また、炭素を長期間土壌の中で固定するため、温暖化ガスの削減にもつながる。

さらに「J-クレジット」(温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度)への登録も視野に入れているという。真造さんは、これらの取り組みを通じ「理想的な循環型農業が確立できる」と前を向く。

青梅の収穫
青梅の収穫は5月下旬から6月中旬に行われ、完熟梅は6月中旬から下旬に収穫される(写真:真造農園提供)

私たちが日常生活で利用しているスーパーでは、一年を通じて野菜や果物が季節を問わず並んでいる。しかし、当然のようにあると考えている商品がある日突然、消えるかもしれない。

農産物は、顕在化する気候変動の影響を受けつつ、産地の関係者の努力や工夫を経て、商品として消費者の前に現れていることを忘れてはならない。

【写真】和歌山県みなべ町での青梅栽培・収穫、梅干し加工の様子、雹被害の様子など写真を見る(7枚)
伊藤 辰雄 ジャーナリスト

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いとう たつお / Tatsuo Ito

大学卒業後、ロイター通信社、ウォール・ストリート・ジャーナルなどで記者として、経済・金融政策、金融市場を中心に30年以上に渡り取材。現在は、フリーランス・ライターとして環境分野を中心に取材執筆するほか、会社四季報で食品関係の企業を担当。2024年3月上智大学大学院・地球環境学研究科修了(環境学修士)

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