このようにメニュー・サービスの双方で、他社とは異なるこだわりを貫くニコアンドコーヒー。しかし、もともと同社はアパレルがメインの企業。どうして、カフェ事業を始めたのか。
「立ち上げメンバーの中では、アパレルだけではできないことをしたい、という話がずっとあったんです。カフェがあると、お店での人と人の関わりが増えたり、コミュニティの場が生まれたりする。そこが素敵だと感じていました」(アダストリア・増田太一氏)
当時の社員たちが参考にしたのは、視察に訪れたニューヨークやロサンゼルスで見た風景。サードウェーブコーヒーが流行するなか、これらの都市では、アパレルに併設したカフェが増えていた。これらが、立ち上げメンバーにインスピレーションを与えた。
ニコアンドは、ただアパレルや雑貨を扱う店ではなく、「人の生活」そのものを提案するという理念を持つ。「食」もまた、「生活」を作る大事な要素。だからこそ、ニコアンドには「食」も必要だったのだ。
「衣食住のすべてを提案するという意味において、飲食は欠かせませんでした」(増田氏)
そうして、人の生活に寄り添った、ニコアンドコーヒーがスタートする。
苦戦が続いた10年間
1号店は鹿児島に出店した。なぜ、鹿児島だったのか。
「いろいろな偶然が重なっているんです。うちのコーヒーは、すべてスペシャルティコーヒーを使っているのですが、そのコーヒーは鹿児島の近くにある福岡にあるハニー珈琲から仕入れています。さらに、ちょうど鹿児島に出店する店が、飲食も提供可能な設備を持つところでした」(増田氏)
最初は、コーヒースタンドの併設のみ(なお、その後、1号店には飲食スペースも生まれている)。小さなはじまりだった。
しかし、そこから、軌道に乗るまでの道のりは長かった。2013年に1号店をオープンしてから、長らくカフェ事業単体では、赤字が続いたのだ。そもそも、ニコアンドは、アパレル。飲食のノウハウは、ほぼないに等しかった。
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