”復活”日本−−日中韓・造船三国志 【上】

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現チャンピオンの韓国も負けてはいない。世界最大の現代重工業は10本目のドックを建造中だが、ドックを掘る時間ももどかしいのか、ドックを使わず、ビルを建設するように陸上で船を建造する「陸上工法」に精を出している。世界第2位のサムスン重工業は「海」である。浮きドックと3000トンの吊り上げ能力を持つクレーン船(通常、ドックのクレーン能力は1200トンが最大)を組み合わせ、海で船を建造する。現在、3基目の浮きドックを建設中。

韓国で“本来”のドックをせっせと掘っているのは、新規参入者だ。大手の下請けだったブロック(船殻)専門メーカーが続々、造船所に“成り上がり”、建設業や海運業などからの参入も相次いでいる。これら新興造船所の産業シェアは2年前の2%から13%にまで高まった。

大投資をしない日本 賃金も韓国より安い

中韓の能力増強は、受注をめぐるデッドヒートに直結する。07年上期の新造船受注量はついに中国が韓国を抜き、首位に立った。が、7~9月に韓国が猛然と巻き返し、1~9月累計では中国のシェア33%に対して韓国43%と王座奪回。同じ期間、日本はといえば(受注残は豊富ながら)受注シェアは13%に後退した。

日本の大陥没には理由がある。中韓の能力増強競争を横目に、日本の造船各社は大投資は決してやるまい、と固く決意しているからだ。

「新たにドックを掘る? 絶対にありえない」「高い山の後には深い谷が来るんだから」。判で押したような答えが返ってくる。

日本の造船業界は石油危機の1970年代、プラザ合意の80年代と二度の大リストラを経験した。涙々で設備を半減し、人員も3分の1にまで圧縮した。二度とあんな思いはしたくない、というトラウマが一つ。

それだけではない。日本の間隙を突き、大投資を敢行した韓国が日本を王座から蹴落とした。半導体の日韓逆転と同じパターンである。「(一律削減は)間違っていた。強い会社には投資させ、韓国をたたき潰しておくべきだった」(造船会社中堅幹部)という反省もあるにはある。それでも動かないのは、日本が今の「いき方」に自信を深めているからだ。(【中】へ続く)

中は2月2日、下は3日に配信予定です

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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