”復活”日本−−日中韓・造船三国志 【上】

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10年で世界最強に 中韓の大拡張競争

「江南」だから上海の近郊か、と思い込んだこちらが浅はかだった。上海から高速道路に駆け上る。がんがんトラックを追い抜き、路肩を突っ走り、クルマごとフェリーで揚子江を押し渡る。東京から上海まで3時間。上海からそれと同じ時間をかけた先に、その造船所はあった。

「南通中遠川崎船舶工程有限公司」(NACKS)。中国第4位。川崎重工業が中国最大の海運会社、「中遠」=中国遠洋運輸集団(COSCO)と合弁で設立した。川崎側にすれば、COSCOに頼まれ、「後ずさりしながら」の事業だったが、操業開始から10年、今や日本の同業者が「世界最強」と認める造船所だ。

稲見皎副総経理が言う。「うちがすごいのではない。日本の造船業が長い時間をかけて完成してきたものを実践しているだけ」。NACKSはハードもソフトもそっくり日本から移入している。経験工は採用せず、当初、設計者・技能者はほぼ全員を川崎・坂出工場で研修させた。現在も基本設計は川崎が担当している。

「5~6年、辛抱強く大量派遣、大量研修を続けた。コストも時間もかかるが、川崎の技術を定着させるには、それしかない」(稲見氏)。第1船のバルカー(バラ積み貨物船)は、通常5カ月の建造期間だが、14カ月かけてじっくり仕上げた。急がば回れ、が正解だった。NACKSは今、日本もまだ手掛けていない1万個積みの巨大コンテナ船を建造するまでに成長し、09年には投下資本回収のメドが立っている。

そのNACKSは目下、2本目のドックを建造中だ。完成すれば、能力は3倍になる。のみならず、COSCOとともに大連にも新工場を建設する。こちらの敷地面積はNACKSの1.3倍。09年にはNACKSの建造能力は、一気に6~7倍に拡大することになる。目をむくような大投資だが、NACKSにとってはやむをえざる自己防衛策だ。

「あれはすごい。想像を絶する」。稲見氏が感嘆するのは、上海沖の長興島で建設中の造船基地だ。15年に全長500メートル、幅100メートル級のドックを7本擁し、日本の大手造船所を2、3社合体した規模になる。揚子江流域だけではない。大連でも珠江デルタでも、その数800とも1000ともいわれる造船所が、一斉に建造能力の大拡張を進めている。

中国政府は造船業を戦略産業として育成しているが、省政府の意気込みはさらにすさまじい。中央政府の計画では10年の建造能力は2300万トン(06年比6割増)。ところが、省ベースの計画を集計すると、建造能力は4000万トンを突破し、日本・韓国をあっさり凌駕してしまう。

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