独創、協創、競創が大事、屈辱感がエネルギーになる 石井裕・MITメディアラボ副所長
「無国籍、グローバル、知的集約的、しかも実績主義」なのが研究者。欧米の一流大学では、それが徹底している。トップレベルの研究者に、世界で活躍する条件を聞いた。
--研究者として生き残るための条件は何ですか。
いちばん大事なのは「独創」。新しい価値を生み出すための飛躍がなければならない。ただし真空地帯からは何も生まれない。既存の知識やアイデアを、新しい視点と方法で組み合わせることによって、オリジナルな価値が出てくる。
二つ目が「協創」。会社組織、学校などでは、人々が力を合わせることで初めて大きなことをなしうる。ある分野の専門家だけで集まるのではなく、アート、デザイン、サイエンス、エンジニアリング、ビジネスなど違った角度から光を当てると、気づきやひらめきを得られる。
三つ目は、「競創」。周りと仲良くワイワイと研究するのもいいが、それだけではダメ。進歩を生むのは、健全な競争と、切磋琢磨し合いながら互いを成長させる緊張感だ。
--個人としてはどのような力が求められますか?
「出杭力」「道程力」「造山力」の三つ。人と違うことをやるのは勇気がいる。出る杭を嫌い、釘を打ちつけてしまう組織もある。ただ、出すぎた杭は打たれない。中途半端に出ず、徹底的に出る力が「出杭力」。
「道程力」とは、誰もいない原野に一人分け入って新しい道を造り、その道を孤独に耐えて全力疾走する力。すでに存在する100メートルのトラックを誰がより速く走るのかを競うのは真の競争ではない。