今はなき「小田急モノレール」レア技術の塊だった 「向ヶ丘遊園」への足、日本に2例だけのシステム
ところが、世界各国の都市で交通渋滞が社会問題化すると、軌道桁(線路)を支える橋脚を立てる用地と、簡易な構造物のみで建設可能なモノレールが、再び注目されることになった。とくに海外に比べて道路率(道路面積/土地面積)が低い日本の都市への導入は効果的と思われた。それまで都市交通の主役であった路面電車の代替として地下鉄を導入するには、巨額の費用が必要であり、中容量の乗客輸送であれば、モノレールが最適と考えられたのである。
こうした背景から東京都交通局は、将来の都市交通の実験線という位置づけで、上野懸垂線(上野動物園モノレール、1957年12月開業)を建設した。このモノレールは、ヴッパータール空中鉄道をモデルとしつつ、騒音低減の観点からゴムタイヤを採用するなどの改良が加えられており、都交通局が中心となって技術開発に当たった国産技術に基づくモノレールと位置づけられた。
だが、海外では当時、より近代的な技術を採用したモノレールの研究がすでに進められており、それらが間もなく日本にも輸入されることになる。その1つが、後に東京モノレールに導入された西ドイツ(当時)のアルヴェーグ式モノレールであり、コンクリート製の桁に跨がり(跨座型)、ゴムタイヤで走行する方式である。日本では日立製作所が技術提携した。
これよりやや遅れて日本に入ってきたのが、フランスのサフェージュ式モノレール(懸垂型)であり、パリ地下鉄で実用化済みのゴムタイヤ車両とフランス国鉄が研究試作した振り子車両の理論を応用した設計に特徴があった。サフェージュ式は三菱グループが中心となり、後に湘南モノレール、千葉都市モノレールで実用化されている。
ロッキード式モノレールとは?
そして、最後に登場したロッキード式(跨座型)は、「鉄車輪式」であることが特徴だった。具体的にはコンクリート製の桁の上に、ゴムパッドを介して1本の鋼鉄製のレールを敷き、その上を鋼鉄車輪(防振ゴムが挟み込まれた弾性車輪)の車両が走行するもので、バランスを取るために、上下2カ所の安定輪で側面から軌道を挟み込む機構を備えている。
鉄車輪を使用するメリットとしては、まず、耐荷重性が優れている点が挙げられる(パンクの心配がない)。当時の運輸省の報告書によれば、鉄車輪式はゴムタイヤ式に比べて最大約1.5倍の輸送量となる。また、長距離、高速走行(ロッキード式の諸元表上の最高速度は120km/h)等の面でも有利である。さらに車両構造の面では、アルヴェーグ式は直径の大きなゴムタイヤが客室内に突出して床面がフラットにならず、有効客室面積が狭くなるが、鉄車輪ならばこの問題が解消される。
一方、鉄車輪式の最大のデメリットはゴムタイヤに比べて走行時の騒音が大きい点にあり、都市の街路を通す場合に大きな課題となる。
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