パーティー券公開基準「5万円超」で合意の舞台裏 岸田首相の独断に不満募らせる麻生、茂木両氏

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岸田首相はまず、31日午前の山口那津男・公明代表との会談で、政治資金パーティー券購入者の公開基準額について、自民当初案の「10万円超」から、公明が求める「5万円超」に引き下げる意向を伝え、会談後山口氏は「我々の考え方がほぼ実現する見通しが立ったことを多としたい」と記者団に語った。

続いて首相は、馬場伸幸・維新代表とも会談。現在は公開義務のない政策活動費について、大まかな項目で使途を公開する自民当初案に加え、維新が要求する「10年後の領収書公開」を盛り込む方向で合意した。会談後、馬場氏も記者団に、自民案に賛成する考えを示した。

ただ、この合意の直前まで、自民党内では首相と再修正反対派が水面下で、激しい駆け引きを展開した。特に、麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長が、公明、維新両党の要望について「絶対受け入れるべきではない」と主張し、岸田首相や再修正派とのにらみ合いを続けた。

そうした中、岸田首相は「4・28トリプル補選」の自民「全敗」と、5月26日投開票の静岡県知事選での自民敗北なども踏まえ、「世論の逆風の中で他党の主張を軽視すれば政権がもたない(側近)との判断。麻生、茂木氏の反対を押し切る「首相(総裁)独断の形で、公明、維新両党との合意に踏み切った」(同)のが実態とされる。その結果、政権を中枢で支えてきた麻生、茂木と首相の間に「解消しがたいしこりが残った」(自民長老)ことは否定できない。

国会閉幕後の党・内閣人事で麻生、茂木氏交代も

その一方で、公明や維新に太いパイプを持つ森山裕総務会長と菅義偉前首相は、それぞれ首相の対応を基本的に評価し、麻生・茂木両氏とは一線を画した。このため、自民党内では今回の経緯も踏まえて「首相は国会閉幕後に党・内閣人事を断行し、麻生、茂木両氏を中枢から外すのでは」(閣僚経験者)との憶測も飛び交う事態に。

しかも、党内の一部では早くも、「森山副総裁・石破茂幹事長」といった具体的人事案も取り沙汰されるなど、国会閉幕後の党内政局緊迫化が想定される状況ともなっている。  

年初来、突然の岸田派解散など「何をするか分からない孤立の独裁者」(自民長老)として党内に疑心暗鬼を振りまいてきた岸田首相だけに、総裁再選に向けてどのような決断をするかを、政界全体が注視する状況が続きそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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