財政悪化と経済停滞は先進国共通の構造問題、日本企業は円高前提に対応策を--加藤隆俊・国際金融情報センター理事長(元財務官)《世界金融動乱》

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 むしろ、足元の景気にマイナスを及ぼさず、将来的に効いてくる社会保障の改革--給付開始年齢の引き下げや費用自然増の抑制など--のほうが景気にはいいとする学者も少なくない。
 
 また、財政赤字を抑えていくために、歳出削減のみではなく、歳入面での手当て(増税)をどうするかという問題も議論として残っている。

--ドル基軸体制の揺らぎも指摘されている。

米国の大幅な経常赤字の一方、中国やASEAN、日本などの経常黒字という国際収支の不均衡を改善していくには、ドルが切り下がっていく必要があるということはもともと共通の認識があった。
 
 ただ、米国の経済の足腰、回復力や、新しい分野を見つけて他を引っ張っていく力があるからこそ、ドルが弱くなっても、ドルを持っていることに安心感があった。

それが、ここにきて米国経済の地合いが想像以上に弱いということになると、財政収支が大幅な赤字で、経常収支も赤字で大債務国である状況の下で、ドルを支えるファンダメンタルズに問題はないのかと、皆が不安心理に駆られている。

--実際に米国の実体経済は非常に弱いと言えるか。

日本や欧州と違い、米国では毎年1%ずつ人口が増えている。マイクロソフトやアップルなどの成長企業が出てくる国でもあり、米国経済がこれからも停滞が続くと考える必要はない。足元の景気は確かに弱いため、これからの歩み次第でドルに対する見方も分かれてくるだろう。

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