財政悪化と経済停滞は先進国共通の構造問題、日本企業は円高前提に対応策を--加藤隆俊・国際金融情報センター理事長(元財務官)《世界金融動乱》


 円建てで見た企業収益は縮小するだろうが、それをカバーするだけの収益を海外で上げることが重要だろう。幸い、中国やASEANの国々は経済が好調だ。日本の空洞化につながるかもしれないが、海外で収益を上げるには、設備投資も海外でやっていくしかないだろう。

財政面からバックアップできるかというと、その余裕にも乏しい。一段の金融緩和も考えられるが、目に見える効果がすぐに出るかというと、よくわからない。政策的にはこれといって効果的な手段は見つからない。

--円高阻止を狙い、8月初旬に日本政府は単独で為替介入を行った。

為替介入がマーケットに対する牽制となって、急速な円高を一時的に抑えるという面で意義はある。ただ、為替市場は巨大であり、介入は為替変動を遅らせる効果はあっても、基本的なトレンドを変えることはできない。

1995年に1ドル=79円台を記録した当時、私は大蔵省国際金融局で為替介入の現場にいたが、当時と比べれば、今の日本企業の国際展開は格段に進んでおり、円高対応力も高まっている。

--債務残高で見る限り、日本の財政は欧米以上に危機的状況とされる。

将来的な人口の高齢化に伴い、家計金融資産のストックの減少が見込まれ、国債の消化が厳しくなって国債の発行金利が上昇する懸念がある。今のうちに段階的に歳入の増収策を講じていかないと、将来、極端なことになりかねない。

大震災で資産のストックは大幅に失われたが、フローの経済成長では復興需要が見込まれ、底堅い状況にある。財政再建に向け、本格的な景気回復を待つというよりも、今のうちから段階的に増収を図っていくことが必要ではないか。

かとう・たかとし
1941年生まれ。64年大蔵省入省、93~95年国際金融局長、95~97年財務官。2004年国際通貨基金(IMF)副専務理事、10年から現職。

(聞き手:中村 稔 撮影:梅谷 秀司 =東洋経済オンライン)

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