財政悪化と経済停滞は先進国共通の構造問題、日本企業は円高前提に対応策を--加藤隆俊・国際金融情報センター理事長(元財務官)《世界金融動乱》
--実際、ECBはイタリア国債などの購入を強化している。これで収束に向かうか。
まだ、そこまでは言えない。先日、EFSFの機能強化策が発表されたが、今の資金量の規模で十分かという懸念がある。実質的にユーロ圏内の財政移転となるEFSFの規模拡大にはドイツなどが消極的と言われており、ユーロ圏の問題をいちばん強い国がどこまで支えていくのかが問題の本質だろう。
--ギリシャなど周辺国をユーロから離脱させる選択肢は。
ユーロから離脱するということになれば、ギリシャの銀行から一斉に預金が引き出され、銀行業界が大変なことになるだろう。ギリシャの通貨は大幅に切り下げられ、ギリシャのユーロ建ての債務返済能力に疑念が強まる。そういう意味でのコストは非常に高い。
コストをユーロ圏全体で分担すればできないこともないだろうが、ギリシャを含め、ユーロ圏全体の国が、そうしたことは起こしてはならないという政治的な意思も非常に強い。そのため、現実的にそういう方向には行かないと思う。
■円高継続を前提に、日本企業は海外展開やM&Aを
--日本は大震災後の厳しい経済状況の中で、さらに円高で先行き不安が強まっている。どう対応すべきか。
あまり名案はない。今の円高が一過性で、すぐまた円安に戻るという前提で企業の経営を組み立てるのではなく、ある程度この状態が続くという前提で、海外展開やM&Aを考えていくことではないか。