レーンですしを回さない、新「スシロー」流生き方 入店から注文・会計まで非接触を貫き通す

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試されるのは個々の店舗の実力。魚は切り付けで水分の抜けていく速さなどが変わるが、店舗での最終調理によってよりおいしい状態での提供が可能になる。「いいネタを提供することも大切だが、それ以上に出来たての状態を提供することのほうが大切だ」と水留浩一CEOは言い切る。

もちろんネタの鮮度にもこだわっている。

例えばスシローで使用されているブリやハマチは、九州や近畿地方で養殖されたものだ。水揚げされた魚は、当日中に活け締めにされ、さばかれることが多い。一部では水揚げ後、生きたまま運べる活魚車や活魚船で消費地まで運び、その日のうちに店舗で新鮮なネタを出すところもある。

その反面、店舗で作業する難しさもある。品質の安定だ。人の手による作業を個々に行えば、商品ごとにブレが出てしまう。ネタによってはあぶるなどの工程が必要で熟練度の差も出る。

スシローではパートやアルバイトのスタッフでもこれらの作業ができるように統一したマニュアルを作成。本部の社員が店舗に出向き、商品の調理手順やイメージを徹底的に伝える。より難易度の高い商品では動画版のマニュアルも用意し、これらの施策で品質の維持に努めているわけだ。

ある業界関係者は「セントラルキッチンのほうが厨房のスタッフの負担は軽い」と打ち明ける。それでもスシローはあくまで人の手をなくさず味を追求し続ける。

食材や調理「以外」ではデジタル化を徹底

食材や調理の面では手間暇をかける一方、効率化においては徹底している。

1958年に第1号店(「廻る元禄寿司」)が開業以来、回転ずし業界は外食の中でも省人化が早かった業態だろう。大手3社のうちくら寿司は、2002年に注文用のタッチパネルを導入した。

スシローの場合、現在では入店時の対応も機械化されており、スタッフによる誘導もなく、顧客は指定された番号の座席に案内される。自動精算機のある店舗では、顧客は入店から注文、会計まで店の人間と1回も接触することなく、退店できてしまう。

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