全国屈指の赤字路線「JR芸備線」存続への道筋は? 有識者が提言「赤字どころか、伸びしろある」

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藻谷氏によれば、日本では東京や大阪など大都市部でのイメージで鉄道は黒字経営が当たり前と思われており、過疎地の鉄道は廃線やむなしという風潮があるというが、「それは世界的にはおかしいこと」だと訴える。森林面積を除いた可住地の人口密度は東京や大阪は極端に高いが、欧州で最も人口密度の高いオランダでも島根県並みだ。ドイツやオランダの人口密度は島根県以下で、イギリスに至っては北海道よりも低い。それでも欧州各国には便利な鉄道網が張り巡らされているというのだ。

一方の日本では、人口密度が諸外国と比較してはるかに高いことから鉄道は世界でも珍しく採算が取れたため民間任せで運行されてきたが、JR西日本についてはコロナ禍を経て大都市部の利益で地方路線を維持できなくなり、廃線問題が表面化することになった。なお、日本国内の道路は大半が赤字となっているが、税金で維持管理を行うことが前提となっていることとは対象的だ。

鉄道網が充実しているフランスでも可住地人口密度は北海道程度(資料:藻谷浩介)

こうした状況に対して藻谷氏が提示する解決策は、ガソリン税の税収を振り分け、諸外国のように税金で鉄道を維持することである。そもそも道路はガソリン税で維持管理され、空港については滑走路は自治体所有でターミナルビルは3セク所有、港湾も岸壁は自治体所有となっているのが通常であり、バス会社も航空会社も船会社もこれらの施設コストを全額負う必要はない。しかし、日本では鉄道だけは線路も駅も原則として鉄道会社の所有となっているが、世界ではこれらの施設は公共体が所有するのが一般的である。

備後庄原―新見間には伸びしろがある

藻谷氏は、芸備線の「備後庄原―新見間には伸びしろがある」と強調する。それは、芸備線は行き止まりの盲腸線ではなく、岡山県側で伯備線と接続しネットワークを形成していることがポテンシャルとなっているからだ。特に首都圏からの旅行客や外国人旅行客は鉄道利用者が多いことから、仮に伯備線の新見にミニ新幹線が開通した場合、「観光客が新見から芸備線を利用し庄原市や三次市を訪れるルートになる」と話す。

さらに、芸備線は「備後落合駅で木次線とつながっていることも大きい」。例えば、木次線の出雲坂根駅の3段スイッチバックは「世界各地の観光鉄道にもなかなかない線形で、外国人観光客向けの観光列車のメインコンテンツになれる」ため、芸備線は新見から木次線に観光客を呼び込むためのルートとしても活用できる。

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