ソレイマニ司令官殺害の時も痛手ではあったが、ガーニ司令官が引き継ぎ混乱はなかった。今回のヘリコプター事故による痛手も上手に乗り越えていくことになるだろう。
イランの現在の体制が揺らぐことはないだろうが、墜落した大統領のヘリコプターが1970年代に購入した1960年代のモデルであるといった、大国を自任するイランには似つかわしくない姿が世界中に報道されてしまった。
イランは今後も恐れられる存在でいるため、落としたイメージを回復させる必要がある。
経済制裁で疲弊しているイラン
世界が一目を置くイランは、経済制裁で疲弊している。無人機や弾道ミサイルといった分野で先端技術を誇る一方で、これら以外の分野はとても遅れている。
イラン国民は全般的に貧しい。アメリカのような大国がイランを軍事攻撃するのをためらうほど恐れられているが、イランの国力や軍事力は買いかぶられている。
イラン国民の9割は、ハメネイ師がとる中東地域への拡大政策に反対だ。イラン国民に豊かさをもたらすべきお金が、武装勢力支援に消えていることを快く思っていない。
大統領と外相の死亡事故後の新体制を確立するまでの間、国内を安定させるためにイラン国民の不満解消に取り組む必要があろう。
イラン系武装勢力というのは旧ソビエト連邦時代の各種共産主義政党と同じようなもので、ハマス、ヒズボラ、フーシ派といった勢力も各々のイデオロギーがそれぞれ異なる。
イランの経済的負担を軽減するためには、これら武装勢力への支援を見直す必要があるだろう。事情によっては継続しなくてはいけないものもあろうが、打ち切りや規模縮小を検討する必要があろう。
一方で、イランが地域大国として恐れられているのは、これら武装勢力のおかげでもある。地域大国としてのメンツを保ちつつ、これら武装勢力支援の負担をどのように軽減していくかは課題だろう。
2024年5月20日に回収されたイラン大統領と随行員たちの遺体は、翌21日に埋葬される。司法解剖が行われたのか、行われないで埋葬されるのかわからないが、ヘリコプター墜落事故の幕引きが急がれているように見受けられる。
墜落原因は十分調査されるか、調査結果は発表されるか不透明だ。幕引きを急いで事故原因をベールに包むと、暗殺だった等の陰謀説が絶えないことになる。
この事故が悪天候や操縦ミスが原因の事故であっても、さまざまな臆測が永遠に出続けるだろうし、それが好都合であれば政治的に利用されるだろう。
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