ポケトークが「鬼門のアメリカ」でつかんだ自信 苦難続く日系ITスタートアップの活路となるか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ポケトークの運営会社は、その成り立ちや資本構成もユニークだ。

元はパソコンソフトなどを販売するソースネクスト(東証プライム市場上場)のサービスとして生まれたが、2022年2月に会社分割で法人化された。新会社がポケトークの事業を承継し、急成長を目指す“スタートアップ”として生まれた経緯がある。

2012年に設立されたソースネクストのアメリカ子会社も、同じタイミングでソースネクスト・インクからポケトーク・インクに社名変更し、ポケトーク社の傘下に入った。

アメリカの教育現場でのポケトーク活用の様子
アメリカでは多言語対応ニーズの高い教育機関において、学区単位で大型の受注案件が増加しているという(写真:ポケトーク)

分社化の狙いはグローバル展開の加速だ。直後から外部資本を活用し、2022年2月にはエクスコムグローバルなどから第三者割当増資で13.8億円を調達。合計で7回の資金調達を行い、累計資金調達額は約50億円となる(外部株主の持ち分比率は現在約20%)。

アメリカ事業の好調を受け、会社は2024年3月に2025年中の株式上場を目指すと発表。最新の資金調達に基づく株式評価額は約250億円で、証券市場の間では、上場時の時価総額が1000億円に達するとの見方もある。

ポケトーク社の通期業績は現在非開示だが、会社はアメリカ事業を中心に成長を加速させて、2027年12月期に売上高280億円、純利益100億円を見込んでいる。アメリカの議会予算局は、アメリカへの純移民が2010年から2019年の年平均90万人に対し、2022年には260万人、2023年には330万人になると推定しており、こうしたマクロ環境も追い風になりそうだ。

トップが家族ぐるみでアメリカに移住

ITスタートアップとしての飛躍を目指すポケトークがなぜ、アメリカ事業で成功の手ごたえをつかみつつあるのか。その理由について松田氏は「会社の経営やマーケティングの方針を現地のアメリカ人に任せているところが大きい」と説明する。

そのうえで「そのまま放置するのではなく、自分自身が家族と一緒にアメリカに移住して本社のコミットメントを示している。細かい口出しはしないが、(規制の対応やバグの解消など)アメリカ側のリクエストをすぐ日本の開発者に伝える役割を果たすことを意識している」(松田氏)という。

松田氏はポケトーク・インクのCEOを務めるが、現場の裁量はアメリカ人のゼネラルマネージャーが担っているという。松田氏自身は、前身のソースネクスト・インクを設立した2012年からアメリカのシリコンバレーに移住し、その後は出張ベースで日本に来るという生活を続ける。親会社ソースネクストの社長職は2021年に退いた(現在は同社の会長兼CEO)。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事