サイゼリヤのホワイトソース「さらさら」の秘密 豪の工場立ち上げに携わった元社長が明かす

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ならば、他社もオーストラリアに工場を出せばいいと思うかもしれませんが、先に書いた労務費などの問題があり、そう簡単ではありません。日本の大手企業もいくつも撤退しています。それほど海外からの進出難易度が高い国なのです。

だからこそ、オーストラリア工場は他社が簡単には真似できない、サイゼリヤの強みとなっています。

サイゼのホワイトソースが胸焼けしない理由

ここでサイゼリヤのホワイトソースの秘密を、ちょっとだけお話ししましょう。

バターと小麦粉を混ぜたルーにミルクを加えてつくる通常のペシャメルソースは、かなり粘度が高くて、べっとりしています。ところが、サイゼリヤのホワイトソースは、さらさらです。

これはかなりレベルの高い技術で、しかも、使用するバターの量が全然違う。バターを増やすとしつこくなると思われがちですが、そうではなく、キレがよくなります。バターは動物性の脂肪なので、融点が高い。それでキレ味がよくなるのです。

日本では、値段の高いバターの代わりにマーガリンをよく使います。マーガリンは植物性油脂だから、融点が低い。常温でも溶け出してしまうので、ベタッと舌に残るのです。固まらないからです。

さらに、小麦粉がたくさん入っている。その結果、ボテッとした重たいソースになるのです。

ホワイトソースのキレの違いは、食べたあとに実感できます。べっとりとしたペシャメルソースをたくさん食べると、すぐに満腹になります。満腹というのは、言い換えると、胸焼けしている状態です。

一方、サイゼリヤのホワイトソースは胸焼けしません。使っているバターが良質で、酸化しにくいからです。胸焼けしないから、いくらでも食べられるというわけです。

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満腹にさせずに、満足させること。腹いっぱいにならないから、「おいしかった」という満足感だけを持ち帰ってもらえる。サイゼリヤはそれを狙っています。

また、厨房特有の脂のにおいがほとんどないことも、食後の印象の「軽さ」につながっているはずです。

脂のにおいがしないのは、揚げ物を揚げるフライヤーと、調理用のグリドルがないからです。

これらの機器で使用される油は高温となり、滞留するので、酸化したものになりやすいのです。

堀埜 一成 サイゼリヤ元社長

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ほりの いっせい / Issei Horino

1957年、富山県生まれ。京都大学農学部、京都大学大学院農学研究科修了。1981年味の素に入社。1987年ブラジル工場へ出向、超ハイパーインフレを経験。1998年同社発酵技術研究所研究室長。2000年、サイゼリヤ正垣泰彦より生産技術者として口説かれ、株式会社サイゼリヤに入社。同年、取締役就任。2009年、同社代表取締役社長に就任、2022年退任。

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