なぜ、そんなに広大な土地を手に入れたのか。これは前職の味の素で、ブラジルで工場を立ち上げた時に痛感したことなのですが、工場の敷地が広いと、便利なことがいろいろあるのです。
ひとつは拡張性が高いこと、そして、まわりとの緩衝地帯を持つことができること。さらにもうひとつの大きな理由が、敷地内で排水処理ができるということです。
味の素のブラジル工場では、薄めて基準を満たした廃液を全部自分の土地にまいて、ユーカリを育てていました。ユーカリは生長が速いので、まいた水を全部蒸散してくれます。
ほかにも果樹園でオレンジが山ほど採れたり、牧草地が広がってウシを放牧したりしていました。草もどんどん生長するので、ウシに食べてもらっていたわけです。
いくら基準を満たしているとはいえ、工場廃液を外に流すとお金がかかるし、万が一、基準値を超えたものが流れ出てしまえば、最悪の場合、工場停止のおそれがあります。
かといって、廃液をずっと溜めて持っておこうにも、敷地が狭いと、貯蔵タンクを建てるにも限界がある。だから、どうせ買うなら、できるだけ大きな土地にしようということで選んだのが、メルボルンから約40キロの距離にある土地だったのです。
ホワイトソースが命運を握る
オーストラリア工場のいちばんの目的は、ホワイトソースをつくることでした。
ミルクとバターが主原料なので、それを安く調達できるオーストラリアに工場をつくろうというところから始まった話でしたから、ホワイトソースの生産を軌道に乗せることは至上命令でした。
オーストラリアにはサイゼリヤの店舗はありません。しかも、組合が強くて労務費も高いという話も聞いていました。
にもかかわらず、あえてオーストラリア進出を決めたのは、仕入れコストの圧倒的な安さが魅力だったからです。
そして、いまもサイゼリヤのミラノ風ドリアが安さとクオリティの両面で他社を圧倒しているのは、オーストラリア工場でホワイトソースの生産が成功したからです。
何度コンビニに攻勢をかけられてもびくともしないのは、同じ品質のものを同じ価格帯で売るのは、事実上不可能だからです。
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