JR東「インドネシア鉄道支援」で得た意外な教訓 「内向き姿勢」からの脱却、車両メンテの重要性

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――日本製の新車は相当値段が高くなるでしょうから、どう納得してもらうかにかかっていると思います。

日本ではいまCBM(状態基準保全)や二重系化など、走っていて壊れない車両を提供させていただいているつもりでいる。やはり日本でいいなと思うものは海外でも使っていただきたいと考えている。われわれは鉄道事業者である以上、安全や安定を決して軽視するわけにはいかないので、そこはしっかりとお伝えできればとは思っている。

――現在、インドネシアの車両メーカー・INKAが国産の新車を製造しています。この新車は基本的に日本仕様になるとのことですが、J-TRECも製造に関する支援をされていたと思います。

INKAが日本の車両部品メーカーから部品を買われているという部分はある。一方で、今の新車に対してJ-TRECがどう協力しているか、どうビビッドに反映しているかというとちょっと語弊があるかなと思う。今INKAが造っている仕様にいろいろ落とし込んでいければいいと思うが、時間軸的にあり得ないタイミングだなとは思っている。

車両は造るまでに仕様を固めて事業者とこれでいいか、あれでいいかとやり取りしていったうえで初めて部品発注して、実際に製造していくという流れになっている。1年後に入れるといった話なら、たぶんそこは間に合わないだろう。

INKA製新型車両
INKAが公開したKCI向け通勤電車の最新のイメージ。輸入品の多くが日本から調達されるが、先頭車にはクラッシャブルゾーンが設けられるなど、JR東日本の新系列車両の設計思想も取り入れられている(画像:INKA)

205系はいつまで走れるか

――一方で、チョッパ制御車両を中心とした既存車両の更新(レトロフィット)は中止になる可能性が出てきました。また、205系も直流モーターの車両はあと数年で部品がなくなってくるのではないでしょうか。

確かにそうだ。ただ、部品がなくなるといっても添加励磁制御(直流モーターの205系が採用している制御方式)の車というのは、部品がなくなるといっても半導体みたいなものではなく、どちらかというと鋳物系だろう。例えば、直流モーターは今の日本ではほぼ造っていないと思うが、そのモーターの枠などは鋳物だ。造ろうと思えば造れるが、今さら機器更新するのに直流モーターでやりますかという話になる。それなら交流モーター・VVVF制御化というのが、メンテナンスのライフサイクルコスト的にも品質の面でもいいのかなと感じる。

オーバーホール直後の元埼京線205 KCI
初回の全般検査(オーバーホール)が実施された直後の元埼京線の205系=2016年3月(筆者撮影)
ジャカルタ 都営6000
205系以前に譲渡され、廃車される元都営地下鉄6000形。ジャカルタでの活躍は10年から15年ほどで全車引退した=2016年12月(筆者撮影)

――つまり、もしかしたら今後205系も更新する可能性はある?

インドネシア政府が新車導入の方針となってきて、そういったレトロフィットといったところに目を向けてもらえないかもしれないが。

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