JR東「インドネシア鉄道支援」で得た意外な教訓 「内向き姿勢」からの脱却、車両メンテの重要性

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筆者注:205系車両譲渡を発端とするJR東日本とKCIの良好な関係も10年を迎えた。2023年11月にはKAI・KCI・JR東日本3者間で、3度目の協力覚書が再締結(延長)された。この再締結では、これまでの車両メンテナンスなどの技術的な支援に加え、人材交流、鉄道の安全・安定輸送、公共交通指向型開発に関しての協業関係を強化していくものとしている。
また、2024年3月にはJRTMがKCIとの間で、鉄道車両の機器更新・メンテナンスおよびメンテナンスサービス事業の展開における相互協力に関する協力覚書を締結した。今後ともJR東日本とKCIの関係性は揺るぎないものとなる。一方で、インドネシア政府は2020年以降の中古車両の輸入を禁止しており、従来通りのやり方では、これ以上のマーケット拡大は見込めない。また、日本国内の事情からしても、首都圏の一連の車両更新が完了した今、205系のように大量に譲渡できる車種もなくなってくる。今ある205系をいかに維持するか、そして、最終的には新車の輸出が最も喜ばしいシナリオとなる。

中古車輸入規制の中で今後の展開は

――2023年、横須賀・総武快速線のE217系譲渡に対し、最終的にインドネシア政府が許可を出さなかったことが話題になりました。いずれにせよ、今後は中古車から新車に切り替わるのは避けて通れません。今後の方向性や戦略はいかがでしょうか。

日本のことを好いていただいているというのは感じるところで、できることはとことんやらせていただきたいと思っている。その中で車両に関して言うならば、確かに中古車両の輸入規制などがある。過去にはいろいろと変遷があって中古車輸入が復活するといった動きもあったが、今後どうなるかわからない。

南武線205系 インドネシア 陸揚げ
元南武線の205系がインドネシアに陸揚げされる様子=2016年1月(筆者撮影)
KCI 元武蔵野線205系
到着したばかりの元武蔵野線と一足先に営業を開始した元武蔵野線が顔を揃える=2020年4月(筆者撮影)

当然新車という動きもあるだろうし、鉄道車両だけにかかわらず、駅ナカの開発であったりとか、日本が胸を張れるような安全面であったりとか防災面であったりとか、そういった観点も安全で安定的な鉄道をつくっていくには非常に大事な要素だ。こういった点も含めてますます関係を深めていきたいと考えているというのが、今言えるところだ。

逆に高木さん、日本のよさを伝えるにはどんなところがある?

――架線電圧が直流1500Vで軌間1067mmという共通点は当然ありますが、運行スタイルが昔の日本の「国電」です。ジャカルタ首都圏は国電(KCIの通勤電車)が走っている中、郊外からの中・長距離客車列車も入ってきて、非常に列車密度が高い。いろいろな速度の車両が1つの線路を走っているという状態なので、安全面、まずはATSが入ればと思います。

いまおっしゃったように、いろいろな速度帯の客車、電車が走っている。安全面という点でATSもそうだが、やはり輸送密度は注目に値する。われわれは日本の首都圏の超過密なダイヤを安定的に動かしているという自負があるので、そこをいかにして伝えていければということは考えている。

客車列車と電車 ジャカルタ KCI
ジャカルタ首都圏はさまざまな列車が同じ線路上を走り列車密度が高い。客車区に戻る回送列車(手前)のすぐ後ろに詰まるKCIの通勤電車=2024年4月(筆者撮影)
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