売りに出た「湘南モノレール」が進む道とは?

三菱グループを抜け、みちのりHDの傘下に

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懸垂式モノレールは全国的に見ても珍しい

通常の鉄道は2本のレールの上を列車が走るが、モノレールは文字どおり1本のレールに誘導されて走行する。レールが1本で済むので、その分だけ使用するスペースが少なく、構造物の規模も小さい。つまり、建設費が相対的に安く済むというメリットがある。

モノレールは、レールに車両がぶらさがる懸垂式と、レールの上に車両が乗っている跨座式に大別される。懸垂式は積雪に強く、カーブを高速で走行できるという長所がある。一方、跨座式は構造が簡単なので、建設費がさらに安くなる。

モノレール自体の普及が国内ではあまり進まない中で、東京、千葉、大阪、北九州、沖縄など全国を走るモノレールのうち、主流を占めたのは跨座式だった。懸垂式は、湘南のほかに千葉モノレール、広島スカイレールなどがあるくらいで、少数派だ。

三菱重工自体も、近年はゴムタイヤで走る「新交通システム」と呼ばれる新たな輸送交通を開発しており、国内は「ゆりかもめ」、海外では米マイアミ、シンガポールなどに展開中だ。「懸垂式モノレールは今後の売り込み先も乏しく、メーカーとして鉄道事業を行うメリットはないと判断したのではないか」と、今回の売却話の背景について前出の関係者は語る。

湘南モノレールは黒字を維持している。とはいえ、2013年度のROE(自己資本利益率)はわずか0.5%。2017年度にROE10.2%という目標を掲げる三菱重工にとって、同社は足を引っ張る存在だった。このまま株式を保有し続けるよりも、高い成長が見込める事業に経営資源を集中するほうが得策、との判断が働いたということだろう。

乗車率をどう引き上げる?

「再び成長軌道に乗せるのが最大のミッション」と語る松本氏(撮影:梅谷秀司)

では、どこに売却すべきか。運行当初は新技術の売り込み手段だったとしても、今は沿線住民にとって大事な“移動の足”である。

沿線自治体からは、エレベーターなど駅のバリアフリー設備を充実させてほしいという要望が相次いでいる。首都圏の鉄道会社にもかかわらず、ICカードも未対応のままだ。こうした状況の中、生活路線としての機能向上につながる株主として白羽の矢が立ったのが、みちのりHDだった。

同社は公共交通のスペシャリスト。主な実績があるのはバス事業だが、傘下の福島交通は飯坂電車を運営している。鉄道経営のノウハウもゼロではない。「乗車率を上げて収入を増やし、再び成長軌道に乗せるのが最大のミッション」と、みちのりHDの松本順社長は意気込みを語る。松本氏は買収を機に、湘南モノレールの会長にも就任している。

どうやって乗車率を上げるのか。松本氏は、沿線住民の利用はまだまだ増やせる余地があると考えている。

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