Z世代を不安にさせるビジネスがなぜ流行るのか 不安に動かされる「われわれ」の社会の病理
さて、まず舟津さんがZ世代の若者たちをどのように描き出しているかを見てみよう。この本で舟津さんは、例えば「『コスパ』のよい最適を目指す」「繊細で聡い」とか、実際にZ世代の若者である大学生たちと話をしながら、そこで実際に感じたことを語っている。しかし、ただ語るだけでなく、その背後にある論理を探し出そうとする。
その中で、この本のキーワードとなっているのが「不安」である。Z世代の若者たちは、様々な不安に駆られている。友達がいないのは不安だし、友達に共感されないのも不安、就職が決まるかどうかわからないのも不安、就職しても成長が感じられないのも不安……と不安の種は尽きない。
不安だから、不安のない世界であるテーマパークに通い、みんながやっていることをやろうとし、就活を早くから始め、成長を実感できるように転職しようとする。さらには、(自己を否定されるように思うために)叱られることを恐れ、「アンチ」に対して否定的な態度を取る。このように、不安に動かされるZ世代の若者たちの心理を舟津さんは対話をもとに描き出す。
金儲けがむき出しになった「不安ビジネス」
そして、経営学者としての舟津さんは、そのような不安をビジネスの種にするオトナたちをも描き出す。推し活をしていれば不安を感じない若者に向けて、「推し活」で幸福になれるとシンクタンクは言い、友達と違っていたら不安になる学生に1年生から就活を勧める。そして、自己の成長を求める若者たちにいささか怪しげなビジネスのインターンをさせる。舟津さんは「不安ビジネス」と表現しているが、要するに不安に動かされる若者たちを商売の種にしているわけである。
かつ、舟津さんがいみじくも指摘しているように、不安には根拠がない(なくてもよい)。Z世代の若者たちの不安には必ずしも根拠はない。友達がいなくたって、あるいは共感されなくなっても元気で生きていけるかもしれない(というか、おそらくそうだ)。しかし、不安に根拠はないから、若者たちは不安になり、それを商売の種にするオトナたちが出てくる。
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