実は「世代間ギャップが大きい国」だった日本 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」幻影からの脱却
ここで若干個人的な述懐を記すことをお許しいただければ、私は1961年生まれで、就職した頃、今ではほぼ死語となっている“新人類”と呼ばれた世代に属する人間である。念のため記すと“新人類”とは、それより上のいわゆる団塊世代などとの対比で言われた言葉で、物質的な豊かさがある程度実現された時代に生まれ育ち、「会社への帰属意識が薄い、仕事より個人の志向やプライベートを重視する」等々といった含意で語られたものだった。
そして実際、この後であらためて論じるように、私自身は“団塊世代的”な価値観や行動パターンに対して当時から強い違和感や反発を感じてきたし、実際、さまざまな場面で団塊(およびその前後の)世代の人々とは対立したり衝突したりすることも多かったのである。
もちろん人間は個人によって多様であり、全てを「世代論」で論じることはできないにせよ、基本的な認識として、私と団塊世代(およびそれより上の世代)との間には根本的なギャップがあり、一方、自分よりも若い世代については、むしろ連続性を感じるというのが偽りない“実感”だった。
「世代間距離」を示すデータ
以上は私の主観的な認識に関する話だが、興味深いことに、こうした点を客観的に示すデータがある。それは数年前に亡くなられた社会学者の見田宗介氏――これまであまり記す機会がなかったが、私の大学院時代の指導教員でもあった――が著書『現代社会はどこに向かうか』(岩波新書、2018年)で提示している、NHK放送文化研究所「日本人の意識」調査(1973年以降5年ごとに実施)のデータである。
詳細は略すが、そこではさまざまな事柄に関する日本人の意識の変化が、「戦争世代」「第一次戦後世代」「団塊世代」「新人類世代」「団塊ジュニア」「新人類ジュニア」という世代ごとに区分される形で示され分析されている。
そして端的に言えば、そこで明らかにされているのは、「新人類」以降の世代においては、それまでと異なり、世代間の意識の差がなくなってきているという点に他ならない。
具体的には、世代間の意識の「距離」を数値化して示すと、以下となっている。
●第一次戦後世代と団塊世代=0.21
●団塊世代と新人類世代=0.18
●新人類世代と団塊ジュニア世代=0.06
●団塊ジュニア世代と新人類ジュニア世代=0.03
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