政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」
私以外にも今、日本の大学で半導体の研究を行っている教員には、半導体メーカー出身者が多い。そういった人材の育成機関としての企業は、今どうなっているか不安を感じる。最近は海外留学の社内制度もなくなってきているとも聞く。
企業は人材育成に大きな投資をするような余裕は、もはやないのかもしれない。大学は人材育成に関しても、今まで以上にがんばる必要がある。
――このままでは、日本からエヌビディアのような半導体企業が生まれる可能性が、限りなくゼロになってしまう。
世界中でAI半導体の開発ブームが起きている。「エヌビディアの独り勝ちに挑む」という面もあるだろう。ただ、データセンター向けについては、大量のGPU(画像処理装置)の確保など巨額投資が必要で、もう日本勢がGAFAMと正面から競合するのは難しいかもしれない。
一方で、ネットワークと端末などをつなぐIoT(モノのインターネット化)には、日本が得意とする事業やサービスがある。自動車をはじめとする交通システムや、セキュリティ、製造業などのリアルな現場でも、今後はAIが浸透していくと予想されている。
熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは。
半導体を学ぶ学生が増えている
――東大生の半導体への関心に変化は出てきていますか?
半導体を学ぼうとする学生は、増えている。今の若い人たちは、リーマンショック後に日本の電機産業が苦境に陥り、リストラを繰り返したことを知らない。最先端の技術開発への純粋な興味はあるが、昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い。