ギリシャ危機はユーロ相場の絶好の押し目 "壮大な投機"の効果は一時的

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もちろん、当面はギリシャ情勢が流動的であり、事によっては同国のユーロ離脱というテールリスク実現もあり得るため、ユーロは対ドルで上値が重いことは致し方ない。

仮に、国民投票が賛成多数で金融支援の受け入れを確定した場合、週明け6日の為替市場は素直にユーロ買いで反応するだろう。だが、反緊縮の御旗を守れなかったチプラス政権は内部分裂から瓦解する恐れがある。ここから再び解散・総選挙といったプロセスを踏んでいたら、市場の注目する大型の国債償還(7月20日)に間に合わなくなる恐れも出てくる(それ以前の少額の利払いすら不安があるのだが・・・)。大型償還は8月にも控えていることを踏まえれば、やはり今夏がユーロ相場にとって試練の時間帯であることに変わりない。

ギリシャのユーロ離脱は悪い話ではない

最後にギリシャがユーロを離脱した場合のユーロ相場に与える影響を考察しておきたい。

本当にそのような事態に至った場合、ユーロが一時的に売り叩かれる展開は不可避だろう。今後への漠とした不安が漂う中でユーロを積極的に買う向きは多くない。だが、ギリシャのユーロ離脱は、通貨ユーロの未来にとってみれば、さほど悪い話ではないと筆者は考えている。

金融危機以降、ユーロ相場が下落した局面では、ほぼ例外なくギリシャが絡んでいた。アイルランドやポルトガル、スペイン、イタリアといった国々も時折相場を賑わしたが、結局、一過性のものに終わり、国際金融支援を受けた国は皆、ギリシャよりも後に支援を受けたにもかかわらず、プログラムを無事に卒業している。欧州債務問題と一括りにされがちだが、公的部門が抱えている問題の根深さで言えば、やはりギリシャは異質な存在なのである。そもそもスペインやアイルランドに関して言えば、危機以前は財政黒字であり、金融部門のツケを公的部門が背負ったことで債務危機に陥ったという経緯がある。ギリシャとは事情が違う。

そう考えると、ユーロ相場の長期見通しを立てる上で、ギリシャのユーロ離脱はユーロ圏にまとわりついてきた不透明感を払拭する決定打となるようにも思えてくる。引き続きギリシャ問題は市場を賑わせ、時として急激なユーロ下落を引き起こしそうだが、投資家の目線に立てば、ファンダメンタルズに照らし、そうした局面を「押し目」として冷静に評価することが奏功すると考える。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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