増税案は結局先送り、付け焼き刃の復興事業
痛みを伴う重要な課題に深く切り込めず、期限ギリギリになってあいまいな結論で先送り--。民主党政権の悪い癖が性懲りもなく繰り返されている。
東日本大震災から5カ月近くが経過し、政府の復興基本方針がようやく決まった。しかし、方針決定の土壇場で、増税に反対する民主党内での調整が難航。今後5年間で総額19兆円の復興事業の財源として、はっきり「増税」と書き込めなかった。
7月27日の民主党大震災復旧・復興検討委員会。提示された政府案には、当初5年間の集中復興期間における復旧・復興対策費の財源として、「10兆円程度の臨時増税」が明記された。が、これに民主党議員が猛反発。翌日の会議でも「相変わらず増税ありきの案。お話にならない」と収まらず、日本銀行による国債引き受けや復興債の償還期間を60年にする意見が噴出。期限ギリギリの29日になってようやく、「時限的な税制措置」という表現で決着した。
政府方針のベースとなった民主党案には「復興債および財源確保法案を”新体制において”策定」という一文が挿入された。民主党の直嶋正行・復興ビジョン検討チーム座長は「(菅直人首相の退陣は)もともと既定路線だと思っている」と説明。とりあえず決着はしたものの、所属議員から「次の代表選の最大の論点は財政再建や税に対する考え方だ」という声が出るなど、復興増税の是非は今後内紛の火種となりそうだ。
増税は避けて通れず
政府方針の文章から「増税」の2文字は消えたが、復興事業を賄うのに10兆円近い増税が必要な現実は変わらない。平野達男・復興担当大臣は29日、「(政府税制調査会の)議論のスタートとして(増税規模は)10兆円程度から進める」と言及。当初5年間で必要な財源は2011年度1次・2次補正予算で手当てした約6兆円を除く13兆円。仮に歳出削減や税外収入で4兆円確保できれば、増税規模は9兆円になる計算だ。
税外収入として有力視されているのが、JTやNTT、東京地下鉄の政府保有株。特別会計や公務員給与の削減なども挙がるが、歳出カットによる財源捻出には限度があり、結局は大半を増税に頼らざるをえないのが実情だ。
ただ、復興以外でも「増税ラッシュ」が待ち受けている。B型肝炎訴訟では、今後5年間で7000億円規模の増税が検討されている。菅直人首相の退陣騒ぎで中途半端なままの社会保障改革も、財源である消費税の引き上げ議論は先送りされたままだ。
今後の議論の主舞台は、8月4日から再開された政府税調。後世代にツケを回さない、真摯な議論が求められる。
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