――孤独が社会に与える影響はほかにありますか。
孤独によって人は予防可能な病気になりやすく、早死にしやすいことがわかっています。脳の疾患も起こしやすい。こうした身体的な影響に加えて、社会的という面では、アメリカでは二極化が非常に深刻な状況にあります。
人々はSNSに流れてきたものしか見ず、何が真実で何が現実なのかが、今のアメリカでは人によって違うものになっています。例えば、アメリカにはジョー・バイデンが合法的にアメリカの大統領ではない、と考えている人が何百万人もいます。
考えの違う人たちがお互いに話をするのが望ましいのに、状況は悪化するばかりです。社会的孤立はこうした状況に拍車をかけると考えられます。
孤独はあらゆるレベルでの対策が必要
――イギリスには孤独死担当相がいて、日本でもこの4月から孤独・孤立対策推進法が施行されました。孤独はもはや政府が手をつけないといけない問題なのでしょうか。
個人、家族、そして地域社会、あらゆるレベルで対処する必要があるものと言えます。私たちが1つ知っているのは、物理的な環境を変えると、人々が互いに交ざり合い、語り合い、友人を作る可能性を高められるということです。
例えば企業では、経営陣が、社員などが友人を作れるような環境を整え、文化を変える努力をしなければいけません。同じように、政府は都市や町に、人々が楽しく安全に集えるスペースを作る、といったことができるのではないでしょうか。
――アメリカの連邦政府や州政府、市政府は孤独対策をしているのですか。
アメリカには公衆衛生局長官という役職があり、現在はヴィヴェック・マーシーが務めていますが、在任中に国民の健康のため1つ重要テーマを選びます。マーシーは孤独と社会的孤立を選びました。そして、彼は昨年、非常に優れた報告書を発表しました。
題して『Our Epidemic of Loneliness and Isolation(孤独と孤立の蔓延)』。彼はまず孤独の問題に目を向け、次にその解決策を提案しています。
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