金融庁が注視、「企業型DC」の商品は加入者本位か 仕組み債、外貨保険に続くモニタリングの焦点

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割高な信託報酬の投信が選定される背景として、企業型DCのビジネスモデルが抱える「歪み」も指摘されている。

運営管理機関の収益は導入企業から得る「運営管理手数料」だが、運営管理機関の幹部などによれば「運管業務をペイできるほど十分な手数料を得ているわけではない」。つまり投信の販売会社(商品提供機関)として得られる信託報酬で事務コストの赤字を補填しようとするインセンティブが働くわけだ。

企業型DCが抱えるコスト問題

だが、そのシワ寄せは当然にして加入者にいく。金融庁は「まずは運営管理機関の収益構造や運営実態を把握し、ビジネスモデルの歪みによって加入者の利益が損なわれていないかを分析したい」(幹部)としており、業界共通の重要課題を分析してから個別の監督を行う構えだ。

ほかにも、「金融グループの取引関係による商品ラインナップの偏りなどを把握したい」意向で、いわゆる「系列」の問題なども重要なモニタリング項目に上がるとみられる。

過去のモニタリングでは問題が表面化

金融庁による資産運用業へのモニタリングでは、さまざまな問題があぶり出されてきた。

仕組み債のモニタリングでは、千葉銀行、武蔵野銀行、ちばぎん証券の3社に業務改善命令を発出。処分前から業界として仕組み債の販売を控えたことで、地銀の証券子会社27社のうち10社が2023年3月期決算で赤字に陥った。

外貨建て一時払い保険のモニタリングでも、地銀などで販売自粛や勧誘を見合わせたり、外貨建て保険に重きを置いてきた業績評価体系を見直したりといった動きが相次いでいる。

次にモニタリングのリソースを割くことになる企業型DCをめぐっても、業界の行動変容につながる問題が指摘される可能性が高い。加えて、運営管理機関を変更すると記録関連業務を担うレコードキーパーも変わり、過去の取引データを引き継げなくなってしまうために「導入企業が運管を変更できない」といった課題などにも目が向けられる可能性がある。

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