金融庁が注視、「企業型DC」の商品は加入者本位か 仕組み債、外貨保険に続くモニタリングの焦点

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もっとも、金融庁のモニタリングを待たずして、自主的な変革の動きも出始めている。

グループ内の70社、約9.8万人が加入する日立グループの企業型DCは、2019年4月に選定商品を抜本的に見直した。加入者の利益や理解のしやすさなどを踏まえて、それまで18本あった商品数を9本に絞った。選定された投信8本はいずれも低廉な信託報酬だ。

特筆すべきは、それまで8本だった元本確保型商品が1本だけになったこと。資産運用立国実現プランでは、加入者の運用について「インフレリスクを十分考慮する必要があるが、現状では元本確保型のみで運用している加入者が約3割」に上ることが指摘されている。

その要因の1つと考えられるのが、元本確保型が商品ラインナップの多くを占めることで、無意識に比重を置いてしまう心理的な影響だ。実際、日立によれば、元本確保型を1本に絞ったところ、新規DC加入者においてそれまで2~3割だった投信のみでの運用比率が6割強に増えているという。

価格破壊の波は企業型DCにも

信託報酬の価格破壊の波も企業型DCに及び始めている。

類似した商品性であっても設定時期によって信託報酬が大きく異なる「一物多価」が問題視される中、三菱UFJアセットマネジメントは2023年5月から8月にかけて、過去に設定したDC専用パッシブ商品の信託報酬を主要ファンド並みに引き下げた。

業界最低水準の信託報酬などから公募投信で高い支持を集める「eMAXIS Slimシリーズ」も、北國銀行が今春から企業型DC商品として初めて取り扱いを開始。今後の広がりが期待されている。

企業年金をめぐっては、行動原則となるアセットオーナー・プリンシプルの公表が今夏に控えているほか、厚労省でも運用成果の「見える化」の議論が進んでおり、資産運用立国に向けた議論の中核的な存在になっている。そうした一連の取り組みとして金融庁のモニタリングも動き出す。

企業型DCの加入者は800万人を超え、今後も増加する見通しだ。金融庁には金融機関の投信販売などの分析を通じたモニタリングの知見があり、その知見を企業型DCにも振り向ければ加入者の利益につながる。野村証券・確定拠出年金部の鈴井浩史氏は、「加入者の最善の利益を図るうえで金融庁のモニタリングには意義がある」と期待を寄せる。

企業型DCの商品選定やガバナンスのあり方が大きく変わろうとしている。

北山 桂 東洋経済 記者

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きたやま かつら / Katsura Kitayama

1975年群馬県生まれ。日本農業新聞や博報堂アイ・スタジオ(コピーライター)、「週刊金融財政事情」編集長などを経て、2024年4月東洋経済新報社入社。

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