グリコ「17種類出荷停止」巨大プロジェクトで誤算 40年ぶり社長交代で"データ志向"を目指したが

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現在は5月中旬の再開を目指して復旧に当たっているが、これより早期に復旧する可能性も、さらに遅れる可能性もある。基幹システムの障害の原因、データの不整合との関連性など、原因をすべて特定できているわけではない。「復旧に向けて、出荷業務の手順の見直しや、システムのさらなる改修の可能性も含めて検討している」(グリコ広報)。

障害が発生した新基幹システムは総投資額340億円で、グリコにとって巨大プロジェクトだった。グリコは2014年に完全子会社だったグリコ乳業を吸収合併したが、システムはバラバラだった。会計など統合している分野もあったが、生産関係で異なるシステムを利用していたという。

新システムでは、こうした社内のレガシーを統一し、プロセスをシステム上でつなげ、人による調整を減らすこと。顧客から研究開発、調達までデータと業務を紐付けること、全社レベルでデータを可視化し、課題の発見や経営判断のスピードを上げるといった狙いがあった。開発には複数社のITベンダーが関わっている。

デジタル戦略を打ち出したが

グリコは2022年、40年ぶりの社長交代で創業家の江崎悦朗社長が就任。江崎社長はデータ志向の企業に変革すべく、デジタル戦略を前面に打ち出した。全社員を対象に研修を実施し、デジタル人材育成にも取り組んできた。そんな戦略の中で、新基幹システムは欠かせない要素の一つだった。

今後、懸念されるのは業績への影響だろう。出荷停止中のBifiXヨーグルトやプッチンプリンなどの商品は、最大セグメントである「乳業事業」(前期売上高696億円)に含まれている。1カ月半近く出荷が止まることによる売り上げの減少は大きい。また、物流や人件費など、危機対応の費用を計上する可能性もありそうだ。

昨今、業界を問わずシステム障害事例は多い。みずほ銀行などは大規模なシステム障害を繰り返し、多方面で信用を失う結果になっている。メーカーの場合、出荷停止状態が長引けば、スーパーやコンビニで、ライバルに商品棚のスペースを奪われる可能性は一段と高まる。まさにグリコは正念場。迅速かつ慎重な対応が求められる。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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