“石橋たたく”キヤノン、カメラ好調でも業績は慎重視
会社修正予想は妥当か。キヤノンは7月25日、2011年12月期業績見通しについて、売上高が3兆7800億円(前期比2%増)、営業利益が3800億円(同1・9%減)と、それぞれ上方修正した。特に営業益の増額幅は450億円に上る。
当初は部材調達難が足かせになると見ていたが、代替調達が進んだこともあり「ほぼすべての事業で、工場稼働率が震災前の水準に戻った」(田中稔三副社長)。そのため、複写機などの販売が想定以上に増加する。
ところが、シティグループ証券の芝野正紘アナリストは「会社計画には、まだ余裕がありそうだ」と見る。その根拠は、一眼レフデジタルカメラの販売計画だ。キヤノンは今回、年間販売台数を当初の700万台から730万台(前期比24%増)に引き上げた。それでも、「この数字はありえない。800万台は楽に超えるペース」と、関係者は口をそろえる。
利益率が20%近くある一眼レフはキヤノンの稼ぎ頭で営業益の過半を占める。中国など世界需要が旺盛で、造れば造るほど売れる状態。同社は震災後の6月からフル生産に入った。
大幅増産に向けての体制も万全だ。目下、値崩れが深刻なコンパクトデジカメの一部生産を、国内から中国工場へと移管中。その空いたスペースを使って、主力の大分や長崎工場で休日返上の操業に突入しているもよう。部材調達についても、各メーカーに対して大幅増産分の手配を終えているようだ。
活況にもかかわらず、保守的な販売計画を公表しているのはなぜか。