医師が指摘「悩みから解放されにくい人」3つの特徴 不安、イライラ…日々のストレスが認知症を生む
悩みから解放されにくい人の3つ目の特徴は、「腸内環境がよくない」ことです。食生活の変化、ストレス、抗生物質などの影響を受けると、腸内細菌の生理機能が変化します。腸内細菌は腸内でさまざまな生理活性物質、神経伝達物質、脳に影響を与えるアミノ酸を産生していますが、直接または自律神経を介して脳にシグナルを送ることになります。
さらに腸内細菌の変化は、腸から細菌や毒素などが入り込まないようにするための「腸のバリア機能」、脳に安易に血液中の物質を入れないようにするための「脳のバリア機能」をともに壊してしまいます。その結果、腸からさまざまな炎症を引き起こす物質が血液内に流入することにより、免疫細胞が活性化して、炎症性物質が大量に体内に産生されます。
体内に生じた炎症性物質は脳のバリア機能も越えて脳内に流入するため、脳も炎症状態が引き起こされます。不安やうつなどの精神症状の原因は脳の慢性炎症と関連があることが示されていますが、この脳内炎症は腸の炎症からも誘導されます。
不安症の患者の腸内細菌を調査した研究では、腸内細菌の多様性が低く、特に腸の炎症を抑える作用のある短鎖脂肪酸を産生する菌種の割合が低下していることが示されています。同様にうつ病を発症している患者でも腸内細菌の多様性の低下、真菌のカンジダアルビカンスの増加を認めており、腸内細菌の乱れと精神症状の関係性は、多くの研究で確認されています。
善玉菌を増やすとストレスに強くなる
ストレスにさらされてもうまく適応する能力である「レジリエンス」と腸内細菌叢の関連が研究されています。うつ病や不安症の患者で関連が認められたように、腸内細菌叢の乱れがストレスフルな出来事に対する心理、感情、認知のコントロールに深く関わっていることを示す研究が増加しています。ストレスを受けると腸内細菌の組成に多大な影響を与えることが示されていますが、逆もまた信なりで腸内細菌の乱れを認めている方がストレスに弱いということもいえるのです。
腸内細菌にアプローチすることによりストレスに対するレジリエンスを変化させることができることを示す研究を紹介します。過去6カ月以上にわたり日常生活においてストレスレベルが高い19歳から35歳の男女に対して、乳酸菌サプリメントのカプセルを投与する群と、見た目は同じであるが中身に乳酸菌が入っていないカプセル(ブラセボ)を4週間投与する群に分けました。人前でスピーチをしたり、算数の課題を実行するなどの急性のストレスを与え、ストレスホルモンであるコルチゾールやその他のストレス関連物質を測定するために唾液と血液を採取しました。
ストレステスト後のコルチゾールの値は乳酸菌サプリメントを投与されている人の方が一貫して低い値を示します。ベースラインの値に戻るまで乳酸菌群は約30分であるのに対して、プラセボ群では60分かかっています。被検者自身の当日のストレスレベルによって結果が変わる可能性があるため、テスト当日にストレスを抱えていないと答えた人のみで検討したところ、テスト10分後のコルチゾール値は乳酸菌群の方が低く、ストレスに動じない傾向が示されています。
どのような腸内環境がストレス耐性にベストかについては、さらなる研究が進んでいますが、少なくとも、僕たちは腸内環境を健全に保つことがストレスに対する抵抗力につながり、将来の認知症を予防していく上で重要な鍵であることを認識し、運動・食事などの生活習慣を心がける必要があるのです。
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