子どもたちに大人気!ママは新幹線の運転士 "日本の大動脈を支える母"の両立術

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試行錯誤で始まったこの生活も、だんだん順調に回るようになってきた。いちばんの懸念だった泊まり勤務についても、むしろ日中の時間を子どもたちと過ごせることにメリットを感じるという。「日勤から帰ってきてあとは寝るだけというよりも、子どもたちにとっては、起きている時間をたくさんママと過ごすほうが楽しいのかもしれません」。

人生が2倍楽しくなった

5歳の長女はいま「プリキュア」に夢中で、実は新幹線にはあまり興味がない。だが、保育園で一緒に過ごしている男の子の友達はみな電車や新幹線が大好き。「新幹線運転士のママ」は、男の子たち、そして男の子のママたちに「かっこいい!」と大人気なのだという。長女もそんなママを誇りに思っているのは間違いない。また、3歳の二女は先日、「行ってきます」と自宅を出る千野さんに向かって、キリっと右手を挙げて敬礼をしてくれたという。

「人生が2倍楽しくなりました」と千野さんは言う。乗務中は仕事に集中するが、いったん勤務が終わると仕事を自宅まで持ち込むことはほとんどない。オンとオフを明確に切り分けることができるため、いったん仕事モードのスイッチがオフになれば、家族で何をして過ごそうかということばかり考えているという。

現在、JR東海には子育てをしながら新幹線に乗務している女性が8人いる(運転士3人、車掌5人)。女性の乗務員は333人(運転士130人、車掌203人、2015年3月現在)。千野さんの場合は、実家の大きなサポートがあってこそとはいえ、それでも「やってみると意外とできるんだということがわかった」という。数多くの後輩たちにもそれを伝えていきたいと考えている。

新幹線には子どもを連れた乗客も多い。車掌として車両を回っているときにそんな乗客への気遣いが以前にも増してできるようになった。子どもたちに「ママかっこいい」と言われると、これまでになく仕事へのモチベーションも上がる。これまで男性一色だった職種に、子育てをしながら挑む女性が増えることで、社会が変わっていくのは確かだ。

(撮影:梅谷秀司)

堀越 千代 東洋経済 記者

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ほりこし ちよ / Chiyo Horikoshi

1976年生まれ。2006年に東洋経済新報社入社。08年より『週刊東洋経済』編集部で、流通、医療・介護、自己啓発など幅広い分野の特集を担当してきた。14年10月より新事業開発の専任となり、16年7月に新媒体『ハレタル』をオープン。Webサイト、イベント、コンセプトマガジンを通して、子育て中の女性に向けた情報を発信している

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