大日本印刷にマネックス系ファンドが株主提案 経営学者、楠木建氏の社外取選任で経営改善狙う
その後も複数の案件でTOB(株式公開買い付け)価格に対するコメントなどを発表してきたが、株主提案や法的措置など具体的なアクションは見送ってきた。批判合戦もいとわない香港のオアシス・マネジメントや旧村上系ファンドとは異なり、穏健派のアクティビストファンドとみられている。
DNPは3代にわたる世襲企業
だが、直近の動きは様相が異なる。
3月には衣料品大手のしまむらに株主還元方針の変更を提案した。DNPについては「印刷やパッケージを中心とした成熟産業においては収益性が低く、構造改革が必要な状況」(リリース)と指摘。提案内容も資本効率を高めるための増配や自己株買いではなく、社外取締役の選任まで踏み込んだ。
一般的にモノ言う株主が社外取締役の選任を要求する背景には、現経営陣に対する強い不信感がある。東芝やオリンパスが典型例だが、ファンド側が経営体質改善のために経営陣を監視する目的で自らの腹心を送り込むケースが多い。
今回提案されている楠木氏とマネックスの間には「一切の利害関係はない」(リリース)という。だが、楠木氏はマネックスが開いたフォーラムで基調講演を行うなど、一定の意思疎通があるのは間違いない。
そもそも、DNPを巡っては、以前からガバナンスに関する問題点が指摘されてきた。2018年に就任した現社長の北島義斉氏は、前社長で今年2月に亡くなるまで会長だった北島義俊氏の息子。その義俊氏も父の跡を継いで社長に就いた。つまり、DNPでは3代にわたり、父親の跡を息子が継ぐ”世襲”が続いている。
2023年6月の定時株主総会では、「取締役会の構成が当社の議決権行使方針の多様性要件を満たしていない」(ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント)、「政策保有株式に関する基準」(しんきんアセットマネジメント投信)などの理由から、北島社長の再任に反対票が投じられた。
結果として社長再任自体は可決されたものの、賛成率は82.7%まで低下した。2022年6月には同88.2%、2021年6月には同95.2%だったことを考えれば、株主からの信任は徐々に失われつつあったといえる。
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