蓄電システムには、EV(電気自動車)用の車載電池よりもはるかに長い数十年の耐用年数が求められる。それだけに、電池セルの長寿命化は蓄電システムの運用コスト低減に直結する。
「リチウムイオン電池を用いた蓄電システムは、(昔からある)揚水発電式の蓄電システムに比べて(容量当たりの)初期投資が大きく、電池セルの寿命にも限りがある。そのため短期的には、電池式のコストが揚水式を下回るのは困難だ」
中国電力科学研究院の首席エンジニアを務める惠東氏は、2023年6月に開催された電池業界の国際フォーラムでそんな見方を示していた。
電池式の蓄電システムが抱えるもう1つの課題は、(電池セルの異常過熱による)発火リスクの高さだ。惠氏によれば、蓄電システムの火災事故は公に報じられただけで60件を超えるという。
イーロン・マスク氏も必要性強調
だが、電池式の蓄電システムはコンパクトで設置場所を選ばないという、揚水式にない大きな利点がある。再生可能エネルギーの導入が世界的に加速する中、そのニーズに対応できるのは電池式だけなのが現実だ。
アメリカのテスラは、EVとともに蓄電システムの開発・生産も手がける。同社のイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は事あるごとに次のように語り、蓄電システムの重要性を訴えている。
「再生可能エネルギーの主力は太陽光と風力だが、太陽が(24時間)照らし続けることも、風が吹き続けることもない。人類社会全体が再生可能エネルギーに移行するためには、約200TWh(テラワット時)の蓄電システムが必要だ」
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月9日
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