機能性食品で「怪しい健康食品」を取り除いている 阪大・森下氏が指摘する「小林製薬問題」の本質

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――消費者の機能性表示食品に対する不安が高まっています。

推測ではあるが、円安などを理由に届け出時と異なる原材料を使ったことや、製法を変更した可能性もあり今回の事態につながったかもしれない。

しかし機能性表示食品にかかわらず、トクホや栄養機能食品も含めた健康食品は、医薬品とは違う。あくまでも食品なので、原料を変更することで改良されることもある。だから食品の原料を変えることは、必ずしも悪いことではない。

薬のように原料まで規制するのは過剰だし、実際不可能である。そもそも食品は、その日その日で出来が違ったりもする。食品としての特性を理解する必要がある。

機能性表示食品だったのは不幸中の幸い

――政府は、機能性表示食品制度の見直しを進めています。

もりした・りゅういち/1962年生まれ。1987年大阪大学医学部卒業。スタンフォード大循環器科研究員・客員講師、大阪大学助教授など歴任。1999年に遺伝子治療薬開発を目指すメドジーン(現アンジェス)を設立(編集部撮影)

このような問題が起きてしまったから、見直しは避けて通れないだろう。今回は機能性表示食品が悪者にされているが、もし一般のいわゆる健康食品だったら、もっと被害が拡大していたかもしれない。通常の食品には、健康被害の報告義務がないからだ。

機能性表示食品は健康被害の情報収集が義務付けられているから、早く被害に気づけた面もあるだろう。問題のサプリが機能性表示食品だったのは、不幸中の幸いとも言える。

今後、機能性表示食品での健康被害報告は(法的に)義務化したほうがよいと思うが、何を報告するかの判断が難しい。医薬品であれば、健康被害との因果関係を医師が判断するが、消費者による報告は因果関係の見極めができるのか。実際に小林製薬のケースでは、医師の報告で問題が表面化した。

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